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「お手数お掛けしてすみません。ワタクシ、光が苦手なもので……。」
店主は眼鏡の位置を直しながらそう説明した。それから、先程までは見えなかった警察二人の容姿を視認した。
二人共同じ制帽、制服を身につけている。
片方は白髪交じり。しかし皺や肌の質感からして三、四十代ほどの印象を受ける。黒縁眼鏡をかけた、逞しい男だ。
もう片方は短髪の黒髪。年齢は二十代ほど。制服の着こなしや表情、動作、態度、口調などから、真面目そうな印象を受ける。白髪交じりの警察と比べると、体格はあまり良くない。
「あー、そうだったんですね。だから昼間なのに、窓にも遮光カーテンが?」
白髪交じりの警察は店主の説明の後、閉められている遮光カーテンを見ながらそう尋ねた。
「はい。ちなみに、この眼鏡にも遮光レンズが使われています。」
「へー……。ちなみにここって何の店ですか?看板に"レンタルメモリー"って載ってましたけど。」
「その名の通り、ですよ。」
店主は即答し、視線を真っ直ぐに向ける。
店主と白髪交じりの警察は数秒見つめあった。その後警察が視線を逸らし、隣にいた黒髪の警察に小声で聞いた。
「おい横山、レンタルメモリーってなんだ。"その名の通り"で通じるほど普通に使われてる言葉なのか?」
「えっ!?僕も知らないですよ。」
突然話を振られた黒髪の警察は驚きながら返答した。それを見た店主は静かに笑いながらこう言った。
「ふふ、ま、ワタクシの造語ですからね。」
警察二人は、「造語だったんかい!」とでも言うように失笑する。
店主は微笑みを残しつつ、ゆっくりと口角を下げた。
「ああ……それで、レンタルメモリーというのはですね。先程言いましたように、その名の通りなのですが……」
「記憶をレンタルするんです。」
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