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警察二人はぽかんとした表情で店主を見た。
「……思い出の品を貸し出す、ということですか?」
白髪交じりの方が聞いた。
「いえ、思い出そのものです。」
「お、思い出そのもの!?」
今度は黒髪の方も喋った。
「ええ。タダで実物を見せてあげたいところですが……ま、こちらも商売ですので。」
店主は対価を求める様子は一切なく、むしろ「レンタルは諦めてほしい」とでも言うような口振りだった。黒髪の警察は「そうですよね。」と潔く答えた。しかし、白髪交じりの警察は更に詳しい情報を求めた。
「思い出というのは誰の思い出です?お兄さんの?」
「まさか。ワタクシの思い出など価値がございません。……それと、お兄さんと呼べる年齢でもないですよ。」
店主がそう言うと、警察二人は戸惑った。
「失礼ですがー……おいくつで?」
「少なくとも、お客さん達の年齢は越えていると思いますよ。」
「嘘!?」
「てっきり僕よりお若いかと……。」
唖然とする警察二人を見て、店主は目を細めて笑い、「ヒトは老けるのが早いですからね」とコメントした。
「まるで自分はヒトではない、とでも言っているようですね、お兄……店主さん。」
白髪交じりの警察が冗談めいたような口調で言うと、店主ははっとした表情をして、また元に戻った。
店主は答えた。
「言葉の綾、ですかね。」
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