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お天さんの腰が痛んだなら
恋する誰かが泣いている
お天さんの膝が痛んだなら
恋する誰かのため息さ
レジェンドお天さんは凄腕スナイパー
今日も縁側でその時を待っている
可愛らしい見習いキューピッド達の歌声が、縁側まで届いてきた。
うつらうつらと舟を漕いでいたお天さんは、うっすらと目を開ける。
最近では、キューピッド界の柔らかい光りさえも、目に優しくない。
「眼鏡、眼鏡っと……」
丸くなった背中を伸ばすとコキコキと音が鳴り、腰が鈍く痛んだ。
「おぉっ!恋する誰かが呼んでいる。出動じゃ!」
キューピッド界最高齢のお天さん、されどまだまだ若いもんには負けられない。
トップスピードで下界に降り、恋するターゲットをロックオンした。
夕暮れのグランドに佇む二人は、恋にふさわしいドキドキの緊張感に包まれている。
まさに告白の刻──なのに、なかなか切り出せないようだ。
お天さんには、女の子の心の叫びが聞こえる。
──あんなに何度も練習したのに……言えない……怖いよ。
最近耳が聞こえにくくなり、怖いよの部分を細かいよと聞き違えたが、女の子の恋する気持ちはしっかりと受け止めた。
「任せなしゃいー!」
興奮すると噛んでしまうお天さん。
腕をぷるぷるさせながら、恋の弓矢を引き絞る。
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