縁側のキューピッド

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着いた所は繁華街で、沢山の人で溢れていた。 「うるさい場所だのぅ。濁った恋の多いことよ」 お天さんにロックオンされたのは、待ちあわせに40秒遅れてしまい、謝っている彼女だ。 彼氏はネチネチと、いつまでも文句を言っている。 これは、鉛の矢の出番だ。 「お嬢さん、マッチングアプリを過信してはいけないよ?」 キリリと弓矢を引き絞ったお天さんだが、鼻がムズムズしてきた。 下界の悪い空気にやられたようだ。 ──ヘップシュン!バカ野郎、この野郎! 鉛の矢はお天さんの手を離れ、ニヤニヤと歩いていたおじさんのお尻にプスリと刺さった。 「あ……。ま、まぁな?天使の気まぐれって事で!フォッフォッフォ……」 ところがこのおじさん、会社の部下にセクハラしている最低オヤジだった。 「寧ろグッジョブ!」 お天さん、運の強さも最強だ。 「さて、今度こそ」 悲しそうに立ちすくむ、彼女の胸深くに鉛の矢を放った。 彼女は、夢から覚めたように顔を上げると、憎々しげにマッチング彼氏を睨みつける。 「ネチネチうるさい!あんた最低ね、二度と連絡しないでっ!!」 「ヤレヤレ……しばらく恋はおあずけじゃな」 鉛の矢の効果で恋を失っても、しばらくすると新しい恋を探し出す。 ──そんな生き物なのだ、人間は。 お天さんは、ゆっくりとキューピッド界へ飛び立った。
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