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お気に入りの縁側で熱いお茶を啜っていると、見習いキューピッド達がやって来る。
「お天さん、今日もお疲れさまです!お話聞かせて?」
「あのお話聞かせて〜?」
見習いキューピッド達は後学の為、お天さんの武勇伝を聞きたがる。
お天さんほど、武勇伝の多いキューピッドはいないのだ。
──それだけ、歳をとったと言う事だのぅ。
キューピッド達は役目を終えると、転生して再び見習いキューピッドとして生まれ変わる。
無垢なキューピッド魂は、そうやって維持されている。
ならばお天さんは、なぜ転生しないのだろうか。
キューピッドの放つ恋の矢は、そのキューピッドの能力に応じた数が与えられる。
全ての矢を放ち終えれば、お役御免で転生する。
ただし、キューピッド界の掟を破らなかった場合の話だ。
お天さんは若い頃、掟を破ってしまった。
それからは、お天さんが放つ恋の矢が減ることはない。
いくら放っても、次の日には矢筒が満タンになるのだ。
「いいかい、子供達。キューピッドの掟は決して破ってはいけないよ?」
「はーい、わかりました」
「掟は守ります!」
お天さんは、少し淋しげに微笑んだ。
頭を撫でてもらった見習いキューピッド達は、再び恋の矢の練習に向かう。
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