縁側のキューピッド

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クタクタに疲れて帰ってきたお天さん、背中から矢筒を下ろした。 カランと、矢が一本だけ転がる。 「最後の……か?」 透明の矢、それが最後の一本だった。 「どんな効果がある矢だろう……わからないまま使えないじゃろう」 やはり、掟を破った罪は償えないのか。 使えない矢ならば、いつまでもなくなる事はない。 「結構エグイの、キューピッド界のすることは……」 透明の矢は、光を取り込みキラキラと光る。 その瞬きを見つめていると、いつの間にか眠ってしまった。 久しぶりに夢をみた。 大好きなロンド。 見習いキューピッドの頃から、お天とロンドは大の仲良しでいつも一緒だった。 ロンドが笑うとお天はもっと笑う。 ロンドが泣けばお天はもっと泣いてしまう。 繋いだ手は離したくない。 私だけのロンドでいてほしい。 お花畑が二人の遊び場で、そこでは季節が十分毎にくるくると変化する。 いろんな顔を見せてくれるお花畑で、ロンドは花冠を作ってくれた。 「お天、僕を見つけて」 隠れる場所などない花畑で、ロンドはどんどん走っていく。 いつもはすぐに追いつくのに、ロンドの背中は小さくなるばかり。 「待って、ロンド!置いてかないで!」 誰もいない花畑。 お天の頬を涙がつたう。 「きっと見つけて!お天しか見つけられないだろ?」
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