軍師の嫁取り 1 ~戦の前には恋がある~

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さあ、問題は、孔明本人。 本当に、女として見る事が出来ない。もしくは、気に入らない。なら、いきなり押し掛けてきての無礼は何事ぞと、追い返す事だろう。それが見られないどころか、すっかり、言いなり。すでに、尻に敷かれているのかも……。 「明日も来るとか、仰っていたなぁ」 孔明は、理解不能の顔をして、食事を口にしている。 ははん。と、均は、思う。どうやら、兄は、あちらのお眼鏡に止まったらしい。と、いうことは、わざわざ、均が、手を出す必要はないということだ。 あの方は、すでにその気。 そして、兄を上手く転がして、その才能を引き出してくれるに違いない。 ふと、自分の居場所探しに移らなくてはと、均は、思う。新婚夫婦と、同居は、出来まいし、いや、そもそも、船頭は、二人も必要ない。 そして、翌日。均は、食材探しに里山へ出かけるごとで、家を開けた。すべては、兄のためだった。 孔明は、何故か落ち着かず、均を見送るごとで、門の前に立っている。 「では、いって参ります。兄上」 「うむ、気を付けていきなさい。決して、無理は、しないように。あっ、植物には、毒を持つ物もあるから……」 「兄上、ご心配なく。ほら、来られましたよ。では、私は」 クスクス笑いながら、均は、足早に立ち去った。あの方の馬車の音がしたからだ。 馬車は、孔明の家のかなり手前の畑の前で止まった。そして、例の美女が、今日は、童子を連れて、こちらへやって来る。 「まあ、ご苦労様ですこと。お出迎え頂きまして」 孔明に気が付いた女は、にこりと笑うこともなく、つかつかと、歩み寄って来た。 その後を、童子が、よたよた、ついて来ている。見ると、手に大皿を持っていた。 「きっと、男所帯、まともな物も食してなさらないと思いまして、差し入れです」 女は、嫌みに近い事を言い、童子は、ペコリと頭を下げた。 「あっ、それは、また、なんだか、気を使って頂いて」 散々な言われようではあるが、孔明は、素直に礼を述べた。 それは、女の父親が名士だから、おべっかを使っているのか……。孔明には、分からなかった。
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