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さあ、問題は、孔明本人。
本当に、女として見る事が出来ない。もしくは、気に入らない。なら、いきなり押し掛けてきての無礼は何事ぞと、追い返す事だろう。それが見られないどころか、すっかり、言いなり。すでに、尻に敷かれているのかも……。
「明日も来るとか、仰っていたなぁ」
孔明は、理解不能の顔をして、食事を口にしている。
ははん。と、均は、思う。どうやら、兄は、あちらのお眼鏡に止まったらしい。と、いうことは、わざわざ、均が、手を出す必要はないということだ。
あの方は、すでにその気。
そして、兄を上手く転がして、その才能を引き出してくれるに違いない。
ふと、自分の居場所探しに移らなくてはと、均は、思う。新婚夫婦と、同居は、出来まいし、いや、そもそも、船頭は、二人も必要ない。
そして、翌日。均は、食材探しに里山へ出かけるごとで、家を開けた。すべては、兄のためだった。
孔明は、何故か落ち着かず、均を見送るごとで、門の前に立っている。
「では、いって参ります。兄上」
「うむ、気を付けていきなさい。決して、無理は、しないように。あっ、植物には、毒を持つ物もあるから……」
「兄上、ご心配なく。ほら、来られましたよ。では、私は」
クスクス笑いながら、均は、足早に立ち去った。あの方の馬車の音がしたからだ。
馬車は、孔明の家のかなり手前の畑の前で止まった。そして、例の美女が、今日は、童子を連れて、こちらへやって来る。
「まあ、ご苦労様ですこと。お出迎え頂きまして」
孔明に気が付いた女は、にこりと笑うこともなく、つかつかと、歩み寄って来た。
その後を、童子が、よたよた、ついて来ている。見ると、手に大皿を持っていた。
「きっと、男所帯、まともな物も食してなさらないと思いまして、差し入れです」
女は、嫌みに近い事を言い、童子は、ペコリと頭を下げた。
「あっ、それは、また、なんだか、気を使って頂いて」
散々な言われようではあるが、孔明は、素直に礼を述べた。
それは、女の父親が名士だから、おべっかを使っているのか……。孔明には、分からなかった。
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