軍師の嫁取り 1 ~戦の前には恋がある~

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「幸いな事に、娘は、体が丈夫だ。きっと、子宝にも恵まれる。何しろ、跡を継ぐ者がなければ、家は、潰れてしまう。もしも、その様な事があり、貴殿の有能な血が引き継がれなくなるとなれば、残念至極。つまりだね、嫁選びとは、非常に重要な事なのだよ」 残念至極と、誉められましてもと、孔明が恐縮している側から、黄承彦は、何故か、声を潜めた。 「でだ、これは、ここだけの話だよ。夜になれば、顔など伺えまい。いや、まあ、あの時の顔が、良いという者もいるがね、盛り上がってしまえば、そんなもの。結局の、所は、アソコの相性だろう?しかも、うちの娘は、赤毛だよ。分かるかい?孔明殿。髪が赤毛ということは……、アソコ、の毛も、赤いということ……」 「はっ?!」 くくくく、っと、実に下衆な笑い声を挙げると、黄承彦は、どうだろう?と、孔明へ返事を迫ったのだった。 ──アソコ、とは。全く。 そんな事に釣られて、ホイホイ、話を受けられるかと、孔明は、怒り半分、飽きれ半分で、話を留保していた。 そして、気が付けば、一ヶ(ひとつき)が、経過していたのだ。 「どうせ、父が、娘は、醜女だが、と申したのでしょう」 「いや、醜女、とまでは……」 うっかり口を滑らせた孔明に、女は、はあぁと、ため息をついた。 いつも、こうなんです──。 と、顔を歪めて、愚痴をこぼす女の姿は、実に妖艶だった。 容姿と、実家の財力に釣られる男は、ろくなもんじゃないと、黄承彦は考え、娘の容姿をあえて、醜女と言っているのだとか。 「父の言いたいことも、分かります。ですが、それを、あちこちで、吹聴して……」 これでは、表も歩けないと、女は、更に、息をつく。 はあぁと、流れる吐息に、孔明の胸は、妙に高鳴った。
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