祈る男

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「今日も、いるな。」 いつもは見かけても、無視をして通り過ぎるのだけれど、その時は、立ち止まって公園のベンチに座っている男を見ていた。 その男は、いつも公園のベンチに座って、合掌をするように手を合わせて目をつぶっているのである。 年齢は、70才ぐらいだろうか。 見た目は、ごく普通の、どこにでもいる壮年の男性である。 多分、毎日来ているのではないかと思う。 出勤の駅までの途中に、その公園はあって、ケンジは、よく見かけていたのだ。 ただ、公園のベンチに座って、手を合わせている。 不思議な光景だ。 何をしているのだろうかと、日ごろ思っていたが、今日は、たまたま休みだったので、時間があるせいか、それが気になって仕方がない。 それとなくベンチの近くまで寄ってみると、何かを呟いている。 「ハイ、ハイ、ハイ、、、、。」 リズミカルに、まるで誰かに挨拶をするかのように、「ハイ。」という言葉を繰り返している。 そして、しばらく黙って祈るような表情を見せたかと思うと、また、「ハイ、ハイ、ハイ、、、。」とやる。 ケンジは、男が目をつぶっていることを良いことに、近くでその一連の様子を見ていた。 その光景を見ると、更に、何をやっているのかを知りたくなる。 しばらく見ていたら、ベンチの近くの木の葉がヒラリと落ちてきて、男の頭のてっぺんに、うまいこと乗っかった。 男は、それに気が付かずに、「ハイ、ハイ、ハイ、、、、。」とやっているではないか。 それを見たら、ケンジは、「ププ。」と笑ってしまった。 その声に気が付いて、男は目を開けた。 「わっ、びっくりした。」 男は、本当に驚いて、ケンジを見た。 「あ、すいません。いや、頭のてっぺんに木の葉が落ちて来たので、それが可笑しくて、笑ってしまいました。」 そういうと、男は、ただ頭を振って葉っぱを落とした。 「あのう、失礼なことをお聞きするのですが、あなたは、ここで何をしていらっしゃるのですか。」 ケンジは、どうしても理由を知りたくて、思っていることを、そのままストレートに、男に聞いた。 「なるほど。良かったら、ちょっと腰かけて、お話をしませんか。」 そう言って、男は、ベンチの端に座り直して、ケンジの座るスペースを空けた。 ケンジは、変な人でもなさそうだと思い、男の横に座ることにした。 「あなた、私のしていることが気になるというのですね。」 「ええ、実は、何度もお見掛けしていたのですが、何をしてらっしゃるのかなと常々思っていたんです。でも、それをお聞きする機会もなくて。」 「なるほど、なるほど。」 そう言って、しばらく黙っていたが、「そうだ。」と閃いたように話を続ける。 「ほう、そういうことかもしれないな。いや、そうだろう。ひょっとしたら、あなたを待っていたのかもしれません。わたしは、ここ15年ぐらいになるのだろか、ここで座っているのです。それは、あなたを待っていたのかもしれないのです。」 「わたしを待っていた、、、。」 「ええ、私のしていることを誰かに引き継ぐために、詰まり、あなたに引き継ぐために待っていたのかもしれないのです。」 「どういうことなんですか。あなたのやっていることを引き継ぐためにって、私は、あなたのやっていることが何なのか知らないんですよ。」 「そうでしたね。私は、ただ、ここで祈っているのです。そう、あれは、ちょうど15年ぐらい前のことでした。今日の様に、わたしもこのベンチで座って祈っている人に出会ったんです。それで、その人に、引き継いでくれと頼まれたんです。祈ってくれと。」 「その人って、誰なんですか。」 「さあ。」 「いや、さあって。知らない人に、祈ってくれと頼まれて、そのまま、あなたが、それを引き継いで、祈っているのですか。というか、何を祈ってるんですか。」 「私も、始めは変な話だなと思ったんですよ。ええ。でも、何となく、祈ったら、どうなるのかと興味が湧いてしまったのです。それで、祈っているのです。」 「だから、何を祈っているのですか。」 「まあ、いろいろですな。そうだ、始めは、世界平和とか、そんなことを祈ってみたのですけどね、まあ、人間の欲と言うのは、これは仕方のないものですなあ。だんだん、祈りの内容が増えてきましてね。数が多くなってきたので、祈り忘れないように、この紙に書いてあるんですわ。」 そう言って、男は、1枚のA4の白い紙を見せた。 ヨレヨレになった紙には、びっしりと文字が書かれている。 ケンジは、それを覗き込んだ。 「なるほど、世界平和ですか。」 「やっぱり、祈るとなると1番最初に考えつくのは、こういうことになるでしょ。ちょっとカッコエエのを祈りたくなる。それに、世界平和なんて祈ってたら、まあ自分でもエエコトしてるって気になるんですな。」 「はあ。エエコトしてるって気になるんですね。なるほど。それから、みんなが健康でいられますように。それから、みんなが仲良くくらせますように。それから、それから、みんながお金持ちになりますように。なるほど、やっぱり、みんなが幸せになることを祈るんですね。」 「こんなわたしでも、みんなが幸せになったら、良いなあと思うんやな。」 「それにしても、祈る内容が多いですね。あれ、この最後の方にある、奥さんが味噌汁を濃い目に作ってくれますように、っていうのは何なんですか。」 「ああ、それか。実は、うちの奥さんが、味噌汁を作ってくれるのは、それは有難いんですけどね、塩分取り過ぎたら身体に悪いって言って、メチャメチャ、薄い味に作るんですわ。やっぱり、味噌汁は、濃い味が美味しいでしょ。なので、まあ、最後は、こんなお願も祈ってる訳なんです。」 「いや、それなら、直接、奥さんに、味噌汁、濃い目に作ってって言えばいいじゃないですか。」 「いや、それはアカン。そんなこと言ったら、エライコトになるんですよ、あなた。」 「エライコトって。」 「エライコトって、エライコトです。『そんなこと言うんやったら、もう味噌汁なんか作らへん。』って言って、プイってなりますわな。そんなことなったら、大変じゃないか。」 「はあ。それがエライコトなんですね。」 「プイってなったら、それは、エライコトでしょう。大変じゃないか、実際。」 「まあ、それは置いておいて、近所の和ちゃんのイボ痔が治りますようにっていうのは、何なんですか。」 「ああ、それか。和ちゃんていうのは、3軒隣りの家の奥さんなんだけどね。若い時は、なかなかのベッピンさんでしてね、まあ、わたしも若い時は、ポッとなった時もある訳ですわ。うん、その和ちゃんが、イボ痔になってしもうて、『あんた、毎朝、公園で祈ってるらしいやんか。それやったら、うちのイボ痔も治りますようにって祈ってえな。』なんてことを言われましてね。わたしも、若い時に、ポッとなったこともある和ちゃんですしね、分かったなんて気安く言って、引き受けてしまったという訳ですわ。」 「はあ。それは、大変ですね。」 「30個ぐらい祈ってますからね、1個ぐらい増えたって、同じですし。そうや、そしたら、そろそろ、あんたに引き継いでも良いですね。」 「引き継いで良いですねって、そんなの引き継ぎませんよ。」 「いや、これも縁でしょ。きっと、縁というものですわ。」 「勝手に縁だと、言われても。」 「わたしも、始めは、知らない人に、急に、祈ってくれないか言われてもと思ってたんですけど、今は、ほら祈ってるでしょ。そういうことじゃないかな。わたしの祈りのやり方を聞くだけで良いんです。それで、あなたが、祈らないって決めたなら、それは、それで良いし。ただ、伝えるだけは、伝えたいんですよ。」 「伝えるだけって。」 「そうです、伝えるだけです。やるか、やらないかは、あなたが決めたら良い。どうです、1時間ぐらい時間あるでしょ。」 「まあ、時間はありますけど。本当に、やらなくても良いんですね。」 「ああ、それで良い。」 ケンジは、やる気もないけど、このまま立ち去るのも、男に悪い気がして、聞くだけ聞いて帰ろうと思った。 「じゃ、伝えますよ。ハイ、祈ってください。」 「それで?」 「いや、今言ったのが、全てです。」 「いやいやいや、今、あなたの事を拝見してたら、手を合わせて、『ハイ、ハイ、ハイ、、。』って、言いながら祈ってたじゃないですか。」 「ああ、見てたんですね。あれは、わたしが思いついた方法や。」 「じゃ、それを教えてくださいよ。」 「でもな、あの『ハイ、ハイ、ハイ、、、。』は、意味がないんやな。ただ、何となく、リズムがあった方が、祈りやすいかなって思ってやってるだけや。」 「はあ。意味がない。じゃ、意味が無いことを呪文のように言ってたんですね。」 「ああ、そうや。じゃ、何か。『ホゲ、ホゲ、ホゲ、、、。』の方が良かったか。」 「いや、『ホゲ。』は、可笑しいでしょ。それに『ホゲ。』にも意味が無さそうですし。第一、言いにくいじゃないですか。でもまあ、意味が無いんだったら、言わなくても良いんですね。」 「ああ、言わなくても良い。」 「分かりました。それで、合掌して、祈るんですね。」 「まあ、そうやけど。合掌する意味あるのかな。」 「あるのかなって。あなたも、合掌してたじゃないですか。」 「ああ、合掌してた。でも、これもまた、何て言うのかな。合掌しなかったら、なんやろ、手持無沙汰やろ。手を、こうプラプラさせて祈るのも、なんか可笑しいし。」 「でも、神社でも、お寺でも、お祈りするときは、合掌しますよね。」 「そうやな。あれ、どういう意味があるのかな。何故なんだろう。祈るのに、合掌はいるのだろうか。わたしは、いらないと思うんだな。でも、他にすることなかったら、合掌してもオッケーじゃないかな。」 「そういえば、何故、合掌するのかっていうこと考えたことないですね。何か、意味がありそうな気もしますが、それを説明するのも出来ないかもですね。」 「それで、どこの神様にお願いするのですか。」 「どこの神様って。いや、そんなものは、無い。というか、お願いじゃないんだ。」 「神様じゃない?じゃ、何に対して祈るんですか。」 「そう言われてもなあ。あなたには、特別な神様とかいるのかな。それやったら、その神様で、良いのじゃないのかな。でも、そんな祈りに意味があるのかなあ。」 「別に、何かの神様を信仰してるって訳じゃないんです。ただ、何かお願いする対象っていうのかな、そんなのが必要じゃないかなと思ったんです。」 「そうや、あなたの言うのは、それはお願いや。だから、神様が必要になって来る訳だ。わたしのは、祈りやから、神様は、必要ない。大体、みんな神社とかに行って、柏手をパンパンって打って、お願いしてるでしょ。あなたもそうやろ。それでお願が叶ったか、振り返ってみるべきじゃないか。」 「そういえば、叶ってないですね。」 「そうやろ。そんなもんや。そうや、この前な、そこにお寺あるやろ。あそこで、そうやな20才ぐらいの男の子が、ずっと手を合わしてたんや。30分ぐらい手を合わしてたかな。あんな若い子が30分も手を合わすって、あれは、かなりの問題かかえでるんじゃないかな。家族が重い病気という推測が私の脳裏に浮かび上がったね。医者から見放されて、どうしようもなくなって、だから、神仏にお願いしるしかほか頼るところがなかったんやろうな。そんなので、詰まりは、神様にお願いすることで、家族の病気が治るんかな。あのお寺作った人、まあ誰か知らないんだけど、エライお坊さんやろうけど、残酷な事しはったなと思ってね。というか、あの男の子のこと、可哀想で見てられへんかったわ。」 「それは、可哀想かもしれませんね。」 「そうやろ。どうしようもないことって、生きとったら起こるからね。でも、どうにかしたいから、神仏に祈るんやろ。そら人間と比べたら、神様の方がエライから、だから、お願いになってしまう。お願い、家族の病気治してくださいってね。でも、そんな願いが叶ったって話、わたしは聞いたことが無いなあ。」 「神様に祈るから、お願いになる。そう言われれば、そうかもですね。」 「わたしがやってるのは、祈ることや。純粋に祈る。それが大切な気がするな。」 「はあ。それじゃ、あの味噌汁を濃い目にしてっていうのは、あれも純粋な祈りなんですか。」 「ああ、あれか。あれは、ちょっと置いといてくれるかな。でも、神様とか仏様に祈ってないから、まあ、あれも純粋な祈りやろうな。でも、純粋な祈りでも、まだ叶ってないわな。そうや、あなた、物は相談だが、わたしの代わりに、奥さんに、わたしの味噌汁濃い目に作ってあげてって言ってくれないか。もちろん、わたしから頼まれたってこと内緒で。」 「それは、嫌ですわ。そんな話、知らん人がしたら、奥さんも変に思うでしょう。」 「そうやな。不自然やな。それでバレたら、エライコトになるな。」 「それは、エライコトになるでしょう。」 「そうやな、まあ、今の話は、無かったことにしてくれるかな。」 「でも、何となく、あなたの話、分かるような気がしてきました。それで、祈るのは、ただ、祈るんですね。何か、この辺の空間に向けて。」 「いや、空間に向けんでもええ。ただ、純粋に祈れば良い。」 「なるほど。『ハイ、ハイ、、、。』って言わなくも良くて、合掌もしなくて良くて、ただ、祈れば良いのですね。」 「まあ、そういうことやな。あなた、コツ掴むの上手いですね。もう、あなたに教えることは、無いです。あとは、実践あるのみです。そやけど、自分で言うのも恥ずかしいけど、純粋に人のために祈るってことは、美しいと思うんやな。詰まりは、愛っちゅうやつやと思うんですよ。」 「愛ですか。カッコイイですね。人のために祈って、そして今、祈ることが出来ることに感謝する。」 「うん?今、何て言った?」 「だから、祈って、感謝するって。生きていることを、ありがとうと。」 「アカン。それって、すこぶる不純やと思わないか。どうや。」 「ありがとうって感謝することが不純?ありがとうとか、感謝って、素晴らしいことじゃないですか。」 「素晴らしいかもしれんが、不純や。ありがとうっていう時は、どんな時や。あなた言いましたよね。生きていることを、ありがとうって。それって、生きているということが前提での、感謝じゃないのか。他の場合も、そうや。何かがあって、それも、良いことがあってという前提があっての、ありがとうや。あんた、殺されて、ありがとうって言うか。」 「そんなあ。そんなの屁理屈ですよ。」 「でも、愛するってことは、何の前提もいらないんだよ。それに、祈るってことも、何の前提もいらない。ただ、みんなが幸せになって欲しいっていう気持ちだけや。人が幸せになって欲しいという気持ちで、ただ祈るのが美しいと思うんやな。たとえ、祈っても、誰も、その結果、幸せにならなくても、ただ祈るのが重要な気がするな。もし、わたしが祈ってる時に死んでも、このベンチの上には、みんなが幸せになって欲しいっていう祈りだけが、呑気に座ってると思うな。」 そう男は言って、ややあって、「どうや、カッコエエやろ。」とニヤリと笑てみせた。 「それで、そんなことを、15年も続けている。」 「そういうことやな。それじゃ、祈りのコツを、あんたに教えましたよ。よろしくね。」 そういって、男は、立ち去ろうとしている。 「いやいやいや。ちょっと待ってくださいよ。確かに、祈りについて聞きましたけど、何も、私が、あなたのことを引きついで、祈るなんて言ってませんよ。」 「ああ、知っとる。祈るも、祈らないも、あんたの自由や。好きにしたら、それで良い。」 「でも、これは、あなたにしか出来ないことじゃないかと思うな。」 「わたしにしか出来ないこと。わたしに、そんな才能というか、役割があると?」 「いや、こんなバカげたこと、あなたにしか出来ないということや。いや、あなたの事を、バカにしてる訳じゃないんですよ。純粋に人のために祈るっていうことは、詰まりは、無条件の愛を持っているということやと思うんやな。今の人は、そんなことに価値や意味を見出さないでしょ。でも、あなたには、それが出来ると思う。」 「はあ。そうなんでしょうか。じゃ、あなたは、どうするのですか。」 「さあ。どうするかな。分からんな。」 そう言い残して、ひょこひょこと頼りなげに歩いて、路地に消えていった。 それにしても、ただ、祈るなんて、そんなことを、僕がするわけないじゃないか。 それで、何が変わるというのだ。 でも、タクミにしてみれば、男の話を聞いてあげたことが、この男にとって、良いことをしてあげたのじゃないかと、そう考えていた。 男は、自分のしていることを誰かに伝えたかった。 それを、ケンジは聞いてあげた。 そんなことがあって、1週間ほど経った日の事である。 公園に行くと、例の男がいない。 おかしいなと思って、ベンチで座っていると、小さな子供に砂遊びをさせていたママが、ケンジに言った。 「ひょっとして、タクミおじちゃんを待っているのですか。」 「ああ、あの人、タクミさんて言うんですか。待っているというより、今日は、いないなあと思って。」 「そうなんですね。実は、5日ほど前に、亡くなられたんですよ。」 「亡くなられた。」 「ええ。急ですよね。それで、亡くなる前も、ここに座ってらっしゃって、もし、誰かがタクミおじちゃんを訪ねて来たら、よろしくと伝えてくれと。祈ってくれと伝えてくれと言ってましたよ。」 いや、そんな知らない人に、祈ってくれって頼まれても。 とはいうものの、1回でも、このベンチでお話をした人だ。 これも縁なのかもしれないなと思って、ただ、男の冥福を祈りたい気持ちになって、ベンチで座って合掌をした。 男が、安らかに成仏してくれるようにと。 手を合わせていると、何となく、気持ちが落ち着くのを感じた。 「そうだ。折角だから、世界平和も祈ってみようかな。あ、それと、みんなが、病気もしないで、幸せに暮らせますように。」 そう祈ったら、「ぷっ。」と吹き出してしまった。 なんだ、男と同じことをしてるじゃないか。 自然と、祈ってしまってるよ。 バカバカしい話だよね。 ケンジは、膝の上に落ちた木の葉を、手の甲で払って、立ちあがった。 そんなことがあった1か月後。 公園のベンチに座って祈る男がひとりいた。 ケンジである。 「ホイ、ホイ、ホイ、、、。」 よし、やっぱり、「ホイ。」っていうとリズミカルで、祈りやすいな。 しかし、タクミさんのように、「ハイ、ハイ、ハイ。」の方が、リズムが良いかな。 「えーっと、世界平和に、みんなが病気になりませんように、それと、みんな仲よく暮らせますようにと。」 そういって、手許のA4の紙を確認して、また鉛筆で、何やら書き加えた。 「そうだ。折角だから、これも祈っておこうかな。えー、エクボの可愛いいミニスカートの女の子と、イチャイチャできますようにっと。世界平和とか、人の為ばっかり祈ってるから、1つぐらい、自分の為に祈ってもバチあたらんよね。」 「エクボの、可愛いい女の子と、、、、。あ、気が付いたら、女の子とイチャイチャのお願いばかり10回ぐらい祈ってるわ。それもまあ、純粋な祈りかもだよね。ね、タクミおじちゃん。」 そう言って、ニコリと笑った。 何となく、ケンジの横に、タクミおじちゃんの祈りが、呑気に座っているように思えた。 秋の静かな公園のベンチから、「ホイ、ホイ、ホイ、、、。」という声が聞こえてくる。 少しひんやりとした空気の中で、その声が、何故か楽しそうに拡散していた。 爽やかな風がひとつ、ふわりと吹いたと思ったら、木の葉がヒラヒラと落ちてきて、ケンジの頭の上に、うまいこと1枚乗っかった。
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