借り物の力

1/1
前へ
/1ページ
次へ

借り物の力

新聞を眺めていると、とある広告が目に入った。 「レンタルSELF」 誰かの力を借りてみませんか。 これはいったい、どういうことだ? 俺はスマホで、レンタルSELFを検索した。 レンタルSELF あなたの欲しかった能力、知識。 全て、レンタルSELFで手に入ります。 内容をざっくり説明すると、この世の中にいる様々な人の能力や知識を、その人たちから借りることが出来るらしい。 例えば、ギタリストの能力を借りると、その人の持つ能力を駆使してギターが弾けたり、テニスプレイヤーの能力を借りれば、サーブからラリーまで1通りの動きが出来るようになる。 さまざまなジャンルがあり、スポーツから学業まで幅広くレンタルしているようだ。 また、能力もピンキリで、ビギナーくらいの能力から、プロ並のレベルまである。 能力のレベルに応じて、レンタルの価格が設定されている。 特に優れた能力を持つ人は、自分のレンタルされた売り上げの一部を受け取ることが出来る。 気になった俺は、ゲームのジャンルからfpsを選択した。 様々なレンタル主の投稿が、一覧で出てきた。 「レベル45、1ゲームの撃破数トータル20人の力。」 「称号コンプリートしてます!今までのトータル撃破数5000人!の力。」 初級者は大体1日500円あたり。 中級者になると、1日1000円から1500円ってところか。 興味を持った俺は、試しに1200円のfps中級者のレンタルを申し込んでみることにした。 正直言うと、本当にこれでゲームが上手くなるのか疑っていた。 レンタルの方法は簡単で、レンタルしたい日付を指定して、レンタルを申し込む。 レンタル当日、最寄りのレンタルSELFの店で力を授かれば完了だ。 支払いはその場で現金払いでも良いし、ネットで決済することも可能だ。 当日、近くにあったレンタルSELFの店へ行った。 予約番号を伝えると、店員が俺のおでこにバーコードリーダーをかざした。 「ピッ」という音が鳴り、レンタルが完了した。 「ありがとうございました。またのご利用をお待ちしています。」 え、もう終わり? 半信半疑だった俺は、家に帰って早速fpsゲームをプレイしてみた。 ゲームが立ち上がるまでの時間が、いつもより長く感じる。 ゲームが起動し、早速レンタルした能力を試してみることにした。 「おいおい、マジかよ。これは驚いた。」 レンタルした力は本物だった。 いつもであれば簡単に倒されてしまう俺だが、そんな俺が敵を続けて倒している。 凄い、どんどんいける。 そしてそのまま、俺は1位になった。 これってもしかして、もっとうまい人の力を借りれば、。 レンタルSELFで力をレンタルをするにあたって、いくつか注意事項が書かれていた。 レンタルした能力、知識を使っての利益獲得の禁止。 大会や、コンテスト、試験での不正利用の禁止。 恐喝などを目的とした利用の禁止。 その他、不適切と見られる行為を目的とした利用の禁止。 しかし、それでも人は好奇心には勝てないものだ。 俺は、fps上級者の一覧を開いた。 「レベルMAX。県大会優勝。」 「撃破数全国Top10入りの力。」 こりゃ凄い。 画面をスクロールしていくと、1件の投稿に目がいった。 「全国大会3年連続優勝。撃破数、リーグ戦共に全国1位の力。」 これなら。 いける。 レンタル料は、1日5万円。 簡単には手が出せない金額だ。 だけど、俺は知っていた。 来週、fpsゲームの全国大会が行われる。 優勝賞金は、100万円。 3日間に渡って行われる大会なので、全てレンタルするとなれば、15万円かかることになる。 しかし、優勝すれば差し引いても85万円が手に入る。 やるしかない。 そう思った俺は、早速レンタル申し込みボタンをクリックした。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加