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借り物の力
新聞を眺めていると、とある広告が目に入った。
「レンタルSELF」
誰かの力を借りてみませんか。
これはいったい、どういうことだ?
俺はスマホで、レンタルSELFを検索した。
レンタルSELF
あなたの欲しかった能力、知識。
全て、レンタルSELFで手に入ります。
内容をざっくり説明すると、この世の中にいる様々な人の能力や知識を、その人たちから借りることが出来るらしい。
例えば、ギタリストの能力を借りると、その人の持つ能力を駆使してギターが弾けたり、テニスプレイヤーの能力を借りれば、サーブからラリーまで1通りの動きが出来るようになる。
さまざまなジャンルがあり、スポーツから学業まで幅広くレンタルしているようだ。
また、能力もピンキリで、ビギナーくらいの能力から、プロ並のレベルまである。
能力のレベルに応じて、レンタルの価格が設定されている。
特に優れた能力を持つ人は、自分のレンタルされた売り上げの一部を受け取ることが出来る。
気になった俺は、ゲームのジャンルからfpsを選択した。
様々なレンタル主の投稿が、一覧で出てきた。
「レベル45、1ゲームの撃破数トータル20人の力。」
「称号コンプリートしてます!今までのトータル撃破数5000人!の力。」
初級者は大体1日500円あたり。
中級者になると、1日1000円から1500円ってところか。
興味を持った俺は、試しに1200円のfps中級者のレンタルを申し込んでみることにした。
正直言うと、本当にこれでゲームが上手くなるのか疑っていた。
レンタルの方法は簡単で、レンタルしたい日付を指定して、レンタルを申し込む。
レンタル当日、最寄りのレンタルSELFの店で力を授かれば完了だ。
支払いはその場で現金払いでも良いし、ネットで決済することも可能だ。
当日、近くにあったレンタルSELFの店へ行った。
予約番号を伝えると、店員が俺のおでこにバーコードリーダーをかざした。
「ピッ」という音が鳴り、レンタルが完了した。
「ありがとうございました。またのご利用をお待ちしています。」
え、もう終わり?
半信半疑だった俺は、家に帰って早速fpsゲームをプレイしてみた。
ゲームが立ち上がるまでの時間が、いつもより長く感じる。
ゲームが起動し、早速レンタルした能力を試してみることにした。
「おいおい、マジかよ。これは驚いた。」
レンタルした力は本物だった。
いつもであれば簡単に倒されてしまう俺だが、そんな俺が敵を続けて倒している。
凄い、どんどんいける。
そしてそのまま、俺は1位になった。
これってもしかして、もっとうまい人の力を借りれば、。
レンタルSELFで力をレンタルをするにあたって、いくつか注意事項が書かれていた。
レンタルした能力、知識を使っての利益獲得の禁止。
大会や、コンテスト、試験での不正利用の禁止。
恐喝などを目的とした利用の禁止。
その他、不適切と見られる行為を目的とした利用の禁止。
しかし、それでも人は好奇心には勝てないものだ。
俺は、fps上級者の一覧を開いた。
「レベルMAX。県大会優勝。」
「撃破数全国Top10入りの力。」
こりゃ凄い。
画面をスクロールしていくと、1件の投稿に目がいった。
「全国大会3年連続優勝。撃破数、リーグ戦共に全国1位の力。」
これなら。
いける。
レンタル料は、1日5万円。
簡単には手が出せない金額だ。
だけど、俺は知っていた。
来週、fpsゲームの全国大会が行われる。
優勝賞金は、100万円。
3日間に渡って行われる大会なので、全てレンタルするとなれば、15万円かかることになる。
しかし、優勝すれば差し引いても85万円が手に入る。
やるしかない。
そう思った俺は、早速レンタル申し込みボタンをクリックした。
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