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朝、3階にある自分の教室から校庭を眺めていた。
生徒たちがバラバラと校門から入ってきている。校門の横に立哨のためゴリオ先生が立っていた。
ゴリオと言っても本名ではない。体が大きくて筋肉質だから、安易にそう呼ばれている。また、あの見た目で担当が数学なのだから、人は見た目で判断はできない。しかも、体育の桂木より運動神経が良いのだから、桂木にとっては堪ったものじゃないだろう。
なんで見たくもないゴリオに注目してたのかというと、ゴリオの前に昨日の茶髪の少女が立っていたからだった。
多分、髪の色について指導を受けているのだろう。この学校は校則には厳しい。
「おはよー、奈津。どしたの?外なんか見て?」
「おはよー。ねぇ、あの子、知ってる?同じ学年みたいなんだけど」
私は体をずらし、窓の半分を香織に譲り、あの少女を指さした。
「どの子?ああ、陽菜か。目立つよね。この学校で一人だけ茶髪だし」
「ヒナ?」
「そ。太陽の陽に、野菜の菜で陽菜。中2のときに同じクラスだったんよ。変な子なんだよね。まあ、茶髪ってだけで変なんだけど、授業サボったり、遅刻なんてしょっちゅう」
「そうなんだ」
「え、奈津はああいうミステリアスなのがタイプなの?奈津には私がいるでしょー」
そう言って、香織は私にべったりくっ付いてきた。私は軽く拒絶するふりをする。
「やめてよ~」
そう言って、二人で笑い合った。
楽しい学校生活、優しい友人。
私は恵まれている。どこにも不満なんかない……。
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