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突然の命令
容姿も性格も悪く無い。
人並みの恋愛をしてきたが
何となく婚期を逃した。
…そんな人は結構いると思う。
田畑実もその一人。
38歳、女性。独身。家事手伝い。
結婚を考えていた人と別れ、職場を退職した。
そこに波乱があった訳では無い。
小さく空いた隙間が埋められずに仕事に行くことが苦しくなった。
大した問題でも無い。
今は人生の停滞期。
それだけのこと。
「実、もうすぐ40よ。
仕事も辞めて、家に引きこもって。
私、岡さんの奥さんに根回ししようかしら?
陸くんだって、実と別れてからまだ結婚していないじゃない?」
「辞めておけ。」
母、瑠美のお節介をいつも父、辰が止める。
「なら、お見合い相手を探すわ。」
「やめておけ。 考えがある。」
そう言って辰は居間を出ると、近くで聞き耳を立てる実を見つけ、命じた。
「ここにまだ住みたいなら、爺ちゃんが残した田んぼを今年中に何とかしてくれ。」
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