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大きな病院の 最上階の特別室。
「早瀬まどか」と書いてある。
「妹だ……血は繋がっていない。でも大切な妹だ」
静かにドアを開け中に入った。
「まどか、連れてきたよ」
早瀬君が声をかけるとベッドが起き上がる音がして妹さんの顔が見えた。
「「えっ!」」
まどかさんと私が同時に声を出した。同じ声だ。
そして、鏡を見ているかの様な同じ顔。
「綾、施設長が話していた同じ日に入って来たひとりはまどかの事だと思う。綾とまどかは双子なんだ。まどかしか引き取れなかった親父は、せめてもと、綾をうちのホテルへと…」
私は真実を知り混乱している。でも、まどかさんも早瀬君を本当のお兄さんと思っていたのか、動揺した顔をしている。
「まどか、ごめんな今まで黙っていて……出来れば知らせずに済みたかった。でもまどかを助ける事が出来るのは、この世に綾しかいないんだ」
「お兄さん大丈夫、私、本当はうすうす感じていた……綾さん、初めまして。お兄さんのお嫁さんになるんですよね?宜しくお願いします」
「綾、ふたつ目のお願いだ。まどかは白血病だ。骨髄移植しか助かる道はない。助けてくれないか」
少しの時を置き、私はまどかさんに歩みを進めた。
そしてふたり同時に手を差しのべた。
初めて血の繋がった人と触れ合った。
「総一さん、私やります……私にしか出来ない事」
ふたりの繋いだ手に総一さんの手が重なった。
雨があがった、雲の隙間から射す光がその手を照らしてくれていた。
完
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