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次の日、閉店業務に入ろうとした時、店長がみんなに声をかけた。
「みんな集まってくれ!」
一同どやどやしながらホールの真ん中に集まった。
「実は今日で早瀬君が退職する」
「えっ?」私は思わず声が出た。
私と早瀬君が付き合っている事はみんな知っていた。だからみんなは不思議そうに私を見ている。百合さんが「綾まで聞いてないの?」と驚いている。それが聞こえたのか早瀬君が答えた。
「すみません、訳あって水木さんにも言ってません!」
ゴホンと店長が咳払いをし話し出した。
「実は、早瀬の名字は偶然ではありません。このグループ会社の会長のお孫さん。社長の息子さん。つまり次期社長です」
みんなざわついている。そして何よりも百合さんは声が出ずわなわなとしている。店長が続けた。
「何故水木さんにも言わなかったかと言いますと、早瀬君は自分の立場が知れて水木さんが変に誤解されない様にと私も口止めされてました……じゃっここから早瀬君」
「はい、ありがとうございます」
早瀬君は丁寧に店長に頭を下げてから私の正面に立った。
「綾、昨日言ったサプライズのお願いひとつ目。本当はふたりきりの時に言う事だけど」
そう言ってポケットから四角いケースを取り出した。
「水木綾さん、僕と結婚して下さい」
そう言って差し出されたケースには見た事もない大きなダイヤが付いたリングが光っていた。
「「「おぉ!」」」
私は何が何だかわからず震えて来た。リオさんが私の背中に手を当てて「受け取るよね?」と聞いて来た。
状況が読みとれないまま
「はい」と返事をした。
早瀬君は涙を堪えている。そしてケースから指輪を取り私の薬指にはめた。
みんなの歓声と拍手に包まれてやっと実感が沸いて来た。
「「「頑張れよ!将来の社長夫人!」」」
「えっ?私が社長夫人?」
みんな笑っている。
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