雨あがる

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*** 私が高校3年の6年前の夏だった。 下校時刻に下駄箱に着くと予報通りのゲリラ豪雨。持って来ていたビニール傘を手に靴を履いていた。 「ねぇ水木さん、その傘貸してくれない?」 声の方を見ると隙のない化粧と流行りの髪型をビシッと決め腕組みをした摩耶が片頬で笑い私を見ていた。その両脇にはお付きの仲間が肩を斜めに私を睨んでいた。そのひとりが続ける。 「どうせ真っ直ぐ帰えるだけでしょ?うちら濡れたらせっかくの化粧も髪もくずれちゃうの……お洒落した事ないあんたにはわからないかもしんないけど」 私は黙って傘を握りしめた。 「なに大事そうにしてんのよ!どうせその傘だって税金使って寄付された傘でしょ?私らに使う権利あるんじゃない?いいわね、施設にいるって何でも必要なものはタダで手に入って!」 ビニール傘は力ずくで摩耶の手に渡った。 「さっ!早く何時ものバスに乗らないと夕飯のお手伝いがあるんじゃない?た~くさんの可哀想な子供達がご飯待ってるんじゃない?」 私は雨の中を走り出した。背中に高笑いが聞こえた。 そんな事は慣れていた……。
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