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私はあの話しの頃から、早瀬君はただのフリーターではないのかと思えて来ていた。
何処かで会っている?
何処かで見た目……。
そして今日、あの青いタオルを渡された時に繋がった。
つかえていた「ありがとう」を言わなくちゃ!
1日が長かった、あのタオルを受け取ってからずっと早瀬君の事を考えていた。
仕事が終わり、裏口で早瀬君が出て来るのを待った。
「綾、帰らないの?」
百合さんと、リオさんに声をかけられた。私は何も考えずに早瀬君を待っていると言ってしまった。
裏口の扉が開いた。
「あれ?綾さん。どうした?」
「これ、洗って返すね」とタオルを見せた。
「その顔は……思い出してくれたんだ」
私は涙を堪え、必死に声を出し
「あの時は、ありが……えっ?」
早瀬君の腕が私を包んだ。
「ごめん、始めはこんな気持ちなかった……でもいつの間にか好きになっていた」
「ちょ、ちょっと待って…始めはって?」
「あの雨の日、綾さんを見て可愛い娘だとは思った。でもそれだけだった。それからまた会えて、綺麗になってて……で、一緒に仕事して……綾さんが言うありがとうの響きが好きになってて、そして今は綾さんの事が好きになってて」
「えっ?」
「気づいてほしくて、いつかこのタオル渡したくて、わざと今朝……」
急にそんな事言われてわけがわからなくなってしまったけど、一生懸命に話す早瀬君が何だか可笑しくて笑ってしまった。
「えっ?今笑うとこ?」
「ごめん」
「俺じゃ駄目かな?」
「いいよ!仲良くしよ!」
私は嬉しくて早瀬くんに飛び付いた。
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