日食で、だるまさんが転んだ

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「田淵に頼んだら日食見せてもらえるって噂聞いたんだけど、冗談だよな」 会社の昼休み。 僕は、昼食の店に向かう途中で同僚の田淵に尋ねた。 「いや。本当だよ」 田淵は、あっさりと認めた。 「嘘だろ!?どうやって日食なんて起こすんだよ」 「じゃあ、見せてやるよ」 と言って、田淵は、周りを見渡した。 そして、目当ての店を見つけると、僕を先導して歩き出す。 辿り着いたのは、街でよく見かけるチェーン店のドラッグストアーだった。 「ちょっと待ってろよ」 そう言い残して、田淵は店内へと入って行った。 数分後、田淵が出て来た。 と同時に、辺りが急に暗くなり始める。 空を見上げると、太陽の一部が黒く欠けていた。 そして、見る見るうちに太陽は黒で覆い尽くされ、街は、夜の様に暗くなった。 周りの人々が騒然となる中、僕は、田淵を見た。 近々、日食が起こるなんて、ニュースでも見た事が無い。 明らかに、田淵の仕業としか思えなかった。 「どうやって日食なんて起こしたんだよ!?」 僕は、田淵に詰め寄った。 田淵は満足気に、ポケットからある物を取り出して、僕に見せた。 店から漏れてくる明かりの中、微かに見えたものとは・・・ 「日焼け止めだよ」 「日焼け止め?・・・それが何なんだよ?」 「俺が日焼け止めを買うとオプションとして、一定時間、日食になるんだよ」 「えー!!!・・・お前が日焼け止めを買うと日食になる!!?」 「ああ」 「ひょっとして・・・日焼け止めを買ってくれたから、日焼けをしないように太陽を隠してくれるって事か!?」 「ああ」 「太陽を隠してくれるんなら、日焼け止めなんて買わなくていいんじゃないか?」 「一定時間だからな」 「ああ、そうか・・・一定時間て、どれくらいだよ」 「一時間」 「一時間経たないと、日食は終わらないのか?」 「いや。俺が日焼け止めを塗れば終わるし、後は・・・」 と言って、田淵は、ドラッグストアーに入って行った。 すると、黒い影が去り、太陽が姿を現した。 そして、田淵がドラッグストアーから出てくると、また日食になった。 「田淵が日が当たらない所に行ったら、日焼けの心配が無くなるから日食が終わるってことか」 「ああ」 そう言って、田淵が、また、ドラッグストアーに入って行くと、太陽が出る。 そして、 「だ~る~ま~さ~ん~が、こ~ろ~ん~だ」 と言いながら、ゆっくり田淵が出て来ると、黒い影も、ゆっくりと太陽を隠す。 次に、 「だるまさんが転んだ!」 店内に入った田淵が急いで出て来ると、黒い影も慌てて太陽を隠す。 そして、 「だ~る~ま~さ~ん~が、こ~ろ~ん~だ」 また、ゆっくりと田淵が店内から出て来ると・・・ 黒い影は、太陽を隠さなかった。 「くっそー!見破られたか・・・」 「どうしたんだよ?」 「日焼け止め塗ってきたのバレた」 「あー、それで、日食にならなかったのか・・・って、壮大過ぎるだるまさんが転んだ、やってんじゃねえよ!」
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