妄仙胞子

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「あぁ……すまないね。あんたの連れの子見てたら、なんだかイヅナのその頃を思い出しちゃってね」 「大祓の頃はそのような年頃だったのか」 「そうさ……まぁ実は、気の毒な子でもあってね」 「どういうことだ?」 「亡くしちまったんだ。まだ(とう)と少しほどの歳だってのに、家族も仲の良い子もね……。  大勢のもんは救われた。でも全員って訳じゃあない。あたしは、その救えた命の多さを讃えるべきだと思うけど。そりゃ、他人事(ひとごと)過ぎるってもんかね」 「ふむ……いや、こうして案ずる時点で他人事とはならんだろうさ」 「ありがとね。でも、あのときからイヅナの胸には、小さく深い風穴が空いちまった気がするよ。  話せば明るく優しいことは、あの頃と何ら変わらないんだけど。逆にそれが不憫でもあってね……」 「そうか。難儀な話だな」  その力の及ばぬことにイヅナはどう思っただろう。救える力を持ちながら、救いたい者は救えずに。はて、こりゃ少し先が思いやられるな。 「すまないね、しんみりさせて」 「構わないさ、参考になった。早速、訪ねてみるよ――」  言われた場所へ向かう途中。石ころを拾って空に翳すスエは飄々と口を開く。 「しっかしの、どうするんじゃ。万が一にも、娘っ子が聞き分けの悪い頑固者であったら。ワシは食えんぞ」 「まだ、厄介な相手と知れた訳じゃないさ」
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