妄仙胞子

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 机の前で筆を止め、振り向く姿に話しかける。 「突然に失礼。見聞師のキクリと申します。こっちはスエです。少しばかり話が聞ければと立ち寄らせてもらった」 「あら、見聞師様ですか。イヅナです、ようこそおいでくださいました」  しかし微笑はさっと引き、隣のスエを何故かジッと見入ってしまう。 「ん、なんじゃ娘っ子。背が低いと愚弄する気じゃなかろうな」 「これやめんか。誰も思っちゃない」 「あっごめんなさい。えっと……妹さん?」 「いえ。こいつは見習いみたいなもんで」 「そうですか。可愛いお弟子さんね」 「そりゃとんだ見当違い。跳ねっ返りな娘ですよ」 「誰がじゃ! はぁ、話は長くなるであろうし……ワシは歩き疲れたからの。ちと休ませてもらうわ」  近くの畳へペタリと寝転がる。 「こら。勝手に――」 「いいんですよ、好きに使ってください。この通り大したお構いもできませんが」 「や……すいませんね」 「見聞師さんということは、大祓についてですか」 「ええまあ。ただ薬の知識が長けていると聞いた。それも俺にとっちゃ興味深い。そこらの書はもしや」 「あはは、これ。その通りです。  この村にいつしか薬売りの方も大勢来るようになって、様々なことを聞きまとめていたらこのように」 「どんなもんか少しばかり、見せてもらっても?」  すると照れ臭そうにして言う。 「あまり見やすくはないと思うけれど」
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