東京のにぃさんへ

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東京のにぃさんへ

小さな頃、初めて飲んだときの炭酸の味は今でも覚えている。 ピリッとしていて苦くて大人の味。 にぃさんに「ちょうだい」とお願いをして、分けてもらったあの味は今でも鮮明に覚えている。 炭酸を飲んで少しでも兄さんに近づけると思った。 そんな味がした。 苦そうに飲んでいる私を見て、にぃさんは、 「少し、早かったね。」と微笑んでくれた。 にぃさんへの好意が幼い好きから邪で少しジメジメしているものと気がついた。 それから何度もアタックしていった。 「まだ子供だから」「もう少し、大人になったらね」と何度もかわされていった。 にぃさんが上京すると聞いたとき私は同じように、仕掛けたが、 「まだ、外の世界を知らないんだよ。 まだ、君は女子校しか通ったことがないから身近な男の僕を好きになっただけだよ。もっと世界を見て決めてみてね。」 と微笑みながら言われた。私は突き放されたような気持ちだった。 それからまもなくして私は学内進学ではなく県内の大学に進学した。 広い世界を見てにぃさんに言われたことが本当だったか見て、色々な経験をすることにした。 外の世界はすごかった。外の世界で私は多くの人にあった。 にぃさんより優しい人 にぃさんはよりかっこいい人 にぃさんより強い人 にぃさんよりも賢い人... 色々な男とあった。多分にぃさんの言った通り外にはにぃさんよりすごい人がいた。私も女になれた。 私は知らなかった。 だからね、にぃさん、あのとき少し恨んだけど、 今となっては、それで、それで、よかったとおもう そう... おもってるよ。 サイダーの入ったグラスが揺れて振るえて落ちていきパリンと破れた。
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