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「それよりさ、人生に関わる大事な話って何?」
何となく楽しくなってきて、半分好奇心で聞いてみる。
しかし、狐は急に、神妙な面持ちになる。
悪寒が走る。
「——お前、明日死ぬで。」
静けさが、明るい中を駆け抜ける。
ふと、雰囲気に似合わない大きな笑い声が響く。耐えられなくなった狛が、大声を出して笑い始めたのだ。
「あははははっ! 何それサイコー! ここまで臨場感のある夢を見るなんてすごいとは思ったけど、ひ~っ! 死ぬ死ぬ! 待って無理! 面白すぎ~!」
しばらくそんな調子で狛は一人で騒ぎ立てるが、狐は微動だにしない。
憐れむでもなく、怒るでもなく、犬になるでもなく、ましてや一緒に笑うでもなく、変わらず神妙な面持ちでそこに存在していた。
その間何も言わない狐だったので、流石に違和感に気が付いたのか狛が笑うのを止める。
「…ごめんって~笑ったりして。だってもう、ぷぷっ、面白すぎてっ…!」
謝罪の言葉とは裏腹に、さらに笑い出す。
でも、やっぱり狐の様子は変わらない。
狛が、再び笑うのを堪えると、問う。
「急に何もしゃべらないとか、怖いんですけど…。え、なに、これ冗談でしょ? だって夢だし。何でそんなシリアスな顔してんの? でもそれがっ…! 逆に、おもし、ろ…」
また笑い出すかと思われるタイミングで、やっと狐がしゃべる。
「…ホントやで。」
再び嫌な悪寒が、私の背中を襲う。
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