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違うこれは夢。あくまで夢なんだから。
「え…冗談、でしょ…?」
気付いたら笑えなくなっていた。
悪寒と気持ち悪さが、込み上げる。
震えた声しか、発せなくなっている。
ふと狐が、溜息を吐く。
「人間は、いつもこうやな。特に、世界に対して何かを求めすぎている者は。お前さんの場合は、そやな、刺激ってとこかいな。」
おかしい、体が、震える。
止まらない、どうして…。
そんな狛を置き去りに、狐は話を進める。
「好奇心は毒っちゅー言われるけど、お前さんは完全に毒されてるな。だからお前さんは、いざ死という刺激が来ても、恐怖を感じるだけなんや。」
狐はそれだけ話すと、辺りは再び静寂に呑まれる。
何だよ、何なんだよ…。
え、これ夢でしょ? そうだよね? だったら、信じる必要なんか…。
でも、もう疑いの余地もないほどに体が信じてしまっている。
警告音を、鳴らしている。
「…そんなの、知らないよ…。当たり前じゃん。刺激は欲しいけど、そこまで求めてないし…。」
狐は再び溜息を吐く。
「じゃあお前さんは、程よい刺激が欲しい、とでも言いたいんか。」
呆れたように鼻で笑う狐。
でも、否定は出来なかった。
分かっている。そんなの——
「都合が良すぎやな。」
その一言で、希望は完全に切られる。
「世界はそんな甘くあらへんよ。」
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