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目が覚める感覚は、相変わらず好きではない。
現実世界に引き戻されるような感覚で。
でも、朝は来る。
私は重い頭を持ち上げて、体を起こす。
すると、一人暮らしの家の部屋のはずなのに、ふと声が聞こえてきた。
「なんや、やっと起きたんか。」
途端に上がるのは、地を揺らすような私の悲鳴。
そこにいたのは、狐…だった。
「うるっさいわ! 朝から騒ぎ立てるな!」
耳を限界までペタッと下げる。
私はというと、状況理解が出来ていなかった。
しばらく私が唸っていると、狐が溜息混じりに言う。
「…まさか、覚えとらんのか、夢のこと。」
夢…? 夢…。そういえば、見た気がする。
えっと、あれは、確か…。
最初私は、暗闇にいたんだよね。すごい、暗くて。でも、そこにすごい明るい光がやってきて、えっと…それが…。
「あのときの…狐…?」
あり得ない、と思いながら私は可能性を口にしてみる。
狐は安堵の笑顔で、答える。
「そうや。やっと思い出してくれたか。」
と、同時に、あのことも思い出した。
身震いがする。夢の中で感じたものより酷い悪寒が、吐き気が、込み上げてくる。
いやいや、あれは…夢…。
違う、私、死ぬんだ…。
震えが、止まる。
「…じゃあ、私は、死ぬんだね…。」
一番恐れていたことなのに、なんだか落ち着いていた。
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