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まじまじと俺達を見るや否やサッと血相を変え、
「お、お前は……」
不敵に折坂は笑う。名前が広まっているのは誇るべきステータスらしい。
「矢浪!どうしてここに!?」
名前を呼ばれたのは俺だった。いらねーよそんなステータス。
入学してすぐに上級生に目を付けられた俺は暴力沙汰を起こして謹慎処分を受けた経験がある。だから今もこうして名前を知られているのだろう。
まさかここまで尾を引くとは。感情で動くとろくなことにならない教本だよ。
折坂はどこか悔しそうに、
「くっ、俺はまだまだか。でも流石っすよ!俺もいつか顔見られただけで恐れられる男になります!」
折坂は俺から何も学ぼうとはしなかった。
それに折坂はどこを目指しているのだろう。恐怖の大魔王?つまり俺をそんな目で見てたの?
いい後輩だと思ってたのになぁと悲しんでいると1人の男が俺の前に立った。
「へー、噂では聞いてたけど、こいつが矢浪ね」
明らかに不良には見えない好青年。見かけでは判断出来ないやつが裏で非人道的なことをしてるからタチが悪い。
唯一例外な人を見下した目で値踏みするように見ると鼻で笑い、
「でも知ってんだぜ?出回ってる話だけで、実際は喧嘩もまともに出来ない腰抜けだってな」
どこかで聞いた話だと思ったら3年の先輩も同じようなこと言ってたな。
謹慎後は表立った喧嘩はしてないし、極力目立たないよう慎ましい生活を心掛けている。その成果はこうして実を結んでいた。……腰抜けは言い過ぎだけど。
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