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「って、そんなのはどうでもいいんだよ!」
カッと目を見開き、大声を出した。
俺と折坂は少し身を引く。情緒が不安定な子なのだろうか。
「矢浪君!君は噂通りの男だ!その辺の自称俺最強(笑)とは訳が違う!」
え、何こいつ。急に笑ったりして怖いんだけど……。
「特にさっきの投げ飛ばし、あれはただの膂力だけじゃ説明がつかない。きっと力の流れへの理解、把握、干渉が完璧なんだろう。もしかしたらエネルギー伝達の問題か?地力を吸い上げてる?合気道の経験者?」
怖い怖い怖い!
早口で捲し立て上げて、質問する度に近寄って来る。あまりの変わり様に純粋な恐怖を覚えた。
こそこそ距離を取る折坂が目に入り、
「じ、じゃあ、俺部活に行くんで」
「こら!逃げんな!」
学ランからはみ出したパーカーのフードを慌てて掴む。
ぐえっと奇声が聞こえても今は気にしない。頼むから俺を1人にしないでくれ。
「この人超怖いんすけど」
「同感だ。オタクは自身の領域の話になるとブレーキ壊れるって聞いたけど本当らしいな」
背を向けて小声で話すも自問自答を繰り返す犬洞の耳には届いていない。
このまま2人で逃げようかと考えたが、妙に後ろ髪を引かれる気分になる。
「犬洞君は武術とか好きなんだな。真逆の人かと思ってたよ」
口にしていた力の流れに関しては俺が常に意識している部分でもある。
ほんの少しの動作で見抜いたのだから、犬洞も武術を齧った人間なのだろう。
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