02_この学校ではよくある話

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 「実は実家が古武術の道場やっててね。だけどご覧の通り才能が無いから理屈にばっかり目が向くようになったんだ」  頬を掻き恥ずかしそうに告げる。  折坂はそれで合点がいき、  「だからオタ、じゃなくて理論派っぽいのか」  漏れてるよ折坂。オタク呼びが隠せてないよ。  「ははっ、気を遣わなくていいよ。実際に武術に関してはオタクなんだ」  言われ慣れているのか犬洞は気にする様子もない。折坂はもうちょい気を遣え。  しかし、俺も聞こえないように言ってたから人のこと言えんよな。そう思っていると後ろから声を掛けられた。  「何かあったの?」  振り返るとそこには2人の女子生徒。  声を掛けたのは水原ハル。俺と同じ2年生でSF研究会部長。  首の傾きに従って肩を越す黒髪も動く。小さな顔に収まった大きな瞳は状況を把握し切れていないようだった。  似たような表情をしていたのは水原の隣に立つ七瀬響香。  背中まで届く栗色の髪は右耳の上あたりで小さくくくられ、何事かと様子を伺う度にゆらゆら揺れる。  1学年下ではあるが水原よりも背が高く、爪先立ちで首を伸ばし見慣れない生徒の存在に気付く。  「先輩、そちらにいるのは?」  「同じクラスの犬洞君。ちょっとしたごたつきに巻き込まれてるところを通りかかったんだ」  ごたつき、と水原は呟き疑いの目を向けた。  「……まさか尋君と折坂君で小銭巻き上げたりしてないよね?」  するかそんなこと。ジャンプしてみろとか何十年前の話だ。  「逆だ逆。金取られそうだったのを助けたんだよ」  恩着せがましいのは好きではないけど、加害者のレッテルだけは全力で剥がす。  「びっくりしたぁ。うちの部から不良が出たら私の責任になるよ」  いわゆる上長の監督不行届か。若干1名はすでに不良だから俺が真っ当に生きるしかない。
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