02_この学校ではよくある話

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 「矢浪君の言う通り、助けてもらったのは俺の方、なんです」  どこか萎縮し犬洞はあらぬ疑いを晴らしてくれる。  目を合わさず、顔が赤い。女子に免疫が無いのがなんとなく伝わってくる。  この2人は見た目だけなら学年でもトップクラス。緊張するのも無理もない。俺も陰では羨ましがられているのかもしれない。  「あの、それでなんですけど……」  口元はもごもご波打ち、目は忙しなく右往左往する。急にどうしたのだろう。  俺達4人が顔を合わせる中、顔を真っ赤にした犬洞は目をきつく閉じながらこう言った。  「助けてもらったお礼と言っては何だけど、俺の実家に遊びに来ませんか?」  「はい?」  いきなりの提案に全員が面食らった。  特についさっき訪れて詳細を知らない女子2人は実家の部分に引っかかっている。  「実家って、4人で押しかけたら邪魔になりませんか?」  七瀬が言うと、犬洞はぶんぶん手を振り、  「ご、ごめん。説明が足りてなかったね」  犬洞は咳払いを挟んで話す体勢を整えた。  「今度の週末創立記念日で3連休があるでしょ?その土日に実家の道場で体験入門があるんだ。集まりが悪いからお前からも誘えって家族に言われてさ」  「道場、入門?」  折坂がぴくりと反応する。  「それに旅館経営もしてるから食事、宿泊は無料で提供するよ。天然の温泉もあるんだ」  「「温泉!」」  水原と七瀬が目を輝かせた。  「他に誰を誘っても大丈夫。ちょっと山奥なのがネックだけど、どうかな?」  SF研究会の3人の顔が一斉に俺を向いた。  「行くっきゃないでしょ!道場で鍛えて強くなるチャンスですよ!」  「山奥の天然温泉!いつか行きたいと思ってたんです!」  「S研の研究旅行だね!交通費なら部費から出せるよ!」  おい、約1名。職権濫用してないか。  迷惑じゃないかと思ったけど、向こうが招待してくれるなら断る理由はない。むしろ俺だけ断ったらノリノリの3人から集団リンチを受けるかもしれない。  「じゅあ、お言葉に甘えて世話になるか」  俺が最後の賛成票を入れると、よっしゃー!やったー!と歓喜の声が上がる。どれだけ旅行好きなんだお前ら。
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