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「矢浪さんのお噂はかねがね聞いております」
「へっ?」
どうしてこんな山奥まで俺の話が?
「と言っても月雄が話す程度ですが」
「あ、そっちですか」
「そっちとは?」
「いえ、なんでも」
暴走族も多いみたいだし、こんな所まで俺の悪評が届いてるのかと思った。そうなったらもう世界救うくらいしか評価を覆す方法が無い。
「月雄が学校の話をするのは滅多にないことですのでとても印象に残っております」
性格や家族の仲というより、話すことが無いんだろう。俺も身内に学校での出来事はほとんど話したりしない。
「えっと、犬洞君はどんな話を?」
「『僕と同じくらいクラスに馴染めていない人に初めて会った』と嬉しそうに話しておりました。孤高の生き方に共感したのでしょう」
なんつー紹介してくれてんだあの野郎。
そりゃ間違ってないけど!似たようなもんだけど!もう少しまともに認知されたかったよ。
いわゆる友達がいないやつの俺にも犬洞さんは哀れみの類の感情を持ち合わせない。優しさと同時に孫も同じ境遇なので慣れているのかもしれない。
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