13人が本棚に入れています
本棚に追加
「ははっ、お孫さんにはお世話になってます」
俗世間的な友達の間柄ならもっと自然に振る舞えたかもしれない。どこか利己的な関係が災いし、日頃の感謝もぎこちなくなってしまう。
「こちらこそ。風変わりな子故に多々ご迷惑を掛けるとは思いますが」
「そんなことないですよ。友達がクラスにいない者同士上手くやってます」
心配無用なことを伝えると何故か笑えてきた。クラスメイトのおじいちゃん相手にどんな近況報告だよ。
自虐で人を笑顔にするのも考えようによっては立派な才能か。正味もっと使える才能が欲しかったけど無いよりはマシか。
ところがここである問題が発生する。
犬洞さんは笑っていなかった。
え、まさか滑った?割と渾身のボケ、いやただの現状だけど。笑ってもらえないと友達少ないアピールをするただの痛いやつになっちゃうんですが……。
物を言わぬ閉じ掛けの瞼の奥には黒い光。犬洞さんは確かに俺を見ていた。
そして今までで最もゆっくり言葉を紡ぐ。
「いい目をしてなさる」
褒められた。しかも目を。何の脈絡もなく。
ここ最近目に関しては好き勝手言われてきた。かつても師匠に覇気が無いだのワイルドさが足りないだの理不尽な言われようだった俺の目。
ここまで真っ直ぐな賞賛を頂いたことがあるだろうか、いやない。反語を使ってしまうくらいには珍しい現象だった。
最初のコメントを投稿しよう!