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喜ぶ俺達を見て犬洞も胸を撫で下ろす。
「よかった。友達いないからこのまま誘えず終いかと思ったよ」
犬洞がクラスで道場に誘い成功する絵は申し訳ないけど想像すら出来なかった。いつも本ばっかり読んでるし。俺は外ばっかり見てるけど。
それに人数が集まったのは俺達が厚かましいってのもある。一応俺以外は今会ったばかりの初対面。普通もう少し躊躇うよな……。
「場所は『岬峠』って地区の『岬村』にあるんだ。詳細は追って連絡したいから連絡先交換してもいいかな?」
「あぁ、もちろん」
ポケットからスマホを取り出し互いに見せ合う。
新しいクラスどころかクラスメイトと連絡先を交換するのは高校生になってこれが初めてだ。およそ中1以来って事実がやけに胸に刺さる。
スマホをポケットにしまうと犬洞は地面に置いていた鞄を手にした。
「今日は本当にありがとう。分からない点があったら何でも聞いていいから。じゃあ、さよなら」
「礼を言うのはこっちだよ。また明日学校で」
残り3人もそれぞれにお礼を言い、しばらくすると水原が号令をかける。
「さっそく今日は明後日に控えたS研岬峠研究旅行についての打ち合わせに移ります。全員部室に集合!」
「「はいっ!」
1年2人が元気よく返事をし、水原を先頭に足早に部室に向かう。
心底楽しそうな背中を眺めて俺はふと考えた。
犬洞は他に誰でも誘っていいって言ったよな……。
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