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「夕食の後も続きをやるかい?」
「もちろん!」
稽古の終わり際、師範代の一言に俺は飛び付いた。
体験入門の期限は明日の午前。時間はいくらあっても足りない。まさか師範代が誘ってくれるとは思わなかった。
夕食を爆速で平らげ、矢浪さんから味わって食えよと白い目で見られるのも華麗に受け流す。
休憩は30分。師範代からは1時間の休みを言い渡されたけど、そんなに休んでいられない。
部屋で時間が過ぎるのを待っていると矢浪さんが戻って来た。
俺が夜も稽古を付けてもらうのは事前に話を通してある。意外そうな顔をして考えた末、そっか頑張れとだけ言われた。あの間は何だったんだろうか。
まぁいい。俺は強くなる為に忙しいんだ。風呂に入るのも後回し。
「と言う訳で昨日風呂で果たせなかったシークレットミッションは矢浪さんに一任します」
「くたばれあほんだら」
断固拒否。手厳し言葉を残し、そのまま洗面所に歯を磨きに行ってしまった。
ふん、真面目ぶりやがって。どうせ昨日だって作戦が成功してたら後で土下座して来たに違いなんだ。その時は毎日特訓に付き合うを条件に見せてやってもいい。
休憩に入ってから25分が経過。もう行ってもいいだろう。
道着に着替えていざ出発。部屋を出る前に鏡越しに矢浪さんと目があった。
「あ、折坂」
うがいをし終えた浪さんが振り向く。
「何すか?」
「あー、とりあえずあんまり無茶すんなよ」
歯切れが悪く要領を得ない言葉。応援、してくれてるのか一応。
「はぁ、ありがとうございます」
よく分からないけど礼だけは言っておく。とにかく俺は道場へと急いだ。
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