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その夜、自室のベットに腰掛けスマホを手に取った。
あまり物を置かない殺風景な部屋。壁掛けの時計は20時を指している。
まだ寝てるような時間ではないと思うけど、通話アプリを押す指は既のところで止まる。
ホーム画面を右へ左へ往復させる。あまりの意味の無さに虚しさが込み上げた。
好きな人に電話する訳でもあるまいし、何を躊躇っているんだ俺は。
「あいつ、誘ったら来るかな……」
気恥ずかしいとかではないけれど、単純に断られた後が辛い。キッパリした物言いをするやつだし。
思考をぐるぐる巡らせたが、馬鹿馬鹿しくなって通話アプリを起動。数少ない連絡先から矢浪五十鈴を選択する。
コール音が鳴り、
『も、もしもし』
2回目を待たずに五十鈴は電話に出た。
「出るの早いな。ゲームでもしてたの?」
『してないけど。尋こそ私の部屋に監視カメラ付けてないでしょうね?』
疑る声で物騒なことを聞いてきた。
「するわけないだろ。そもそも水原の家が分からん」
五十鈴は訳あって現在水原の家に世話になっている。よって盗撮盗聴その他プライベートの侵害行為は出来るはずもないし、したくもない。
『それもそうよね。尋に電話しようとした時に丁度掛かって来たからびっくりしちゃった』
「五十鈴が俺に電話?珍しいな」
音信不通だった頃と比べ、最低限の連絡は取り合うようになった。
それでもいざ電話が掛かって来れば何かあったのかと疑心から入るのは未だ変わってない。
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