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「最後に忠告しておくよ。宿り身の言うことをあまり鵜呑みにしない方がいい」
狼の瞳がスッと細められる。戦闘のスイッチが入ったのを感じ取った。
闘気に呼応し、師範代から教わった膝の力を抜いた自然な構えを取る。
「もう一度だけ言わせてもらう。本当にすまない」
「何度もしつけぇよ。謝るくらいなら最初から馬鹿な真似すんじゃねぇ」
表情の分かりづらい狼の顔が悲しげに見えた気がした。
低い唸り声。闘争本能を全開にし、犬歯を剥き出しにする。
それが戦闘開始の合図だった。
魔物と一戦交えるのは当然初めて。攻撃パターン、魔物特有の動きと全てが初見となる。
よく見ろ。矢浪さんがいつも言っている。師範代も要所要所で口にしていた。
怖がるな。まずは研究。よく見た上で攻撃のリズムを……!?
直進し距離を詰めてくると踏んでいたが、早速出鼻を挫かれる。
飛んだ。しかも溜めをほとんど作らないノーモーションで。
「ったく、無茶苦茶過ぎんだろ」
この前戦ったフォーレンといい師範代といい。こっちの常識を簡単にぶっ壊しやがる。
体毛をはためかせ飛来する師範代。振りかざした爪が狙いを定めて怪しく光る。
軌道を予測、屈んで回避。鞭のように振るわれる細腕が頭上を通過し空を切った。
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