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振り向いた先で師範代は次の行動に移っている。押し込んだバネのような身のこなしで肩から突っ込んで来た。
「いっ……」
交差した腕に伝わる衝撃が全身を駆けめぐる。
狼の脚力が可能にする速さによる威力の増加。よろけながら後退し、どうにか転倒だけは避ける。
安堵したのも束の間。無秩序に襲い来る爪の連撃を紙一重でどうにかかわす。
「どうした!いつまでも避けるだけか!?」
「ちっ、いちいちうるせーな」
闇雲に避けてはいない。こっちにだって考えがある。
まず間合い。腕は人間の体より細く長い。にも関わらず筋肉の付き方によるのか回転数が異様に速い。
リーチの長さは戦いにおいて有利に働く。でもどんな長所にも必ず付け入る隙はある。
古今東西どんな武器にも言える。長物は懐に入られると弱い。
師範代との稽古で培った見切る力を最大限に活かし、タイミングを見計らって前に出る。
爪が届かない内側に潜り込み、肘で師範代の腕を防ぐ。細腕からは想像も付かない力で押し込まれるのを気合いで持ち堪える。
(ここだ!)
もう一方の自由な腕で反撃される前に、人体の急所の1つ顎に向かって渾身の拳を叩き込んだ。
手応えあり。勢いに押され師範代は明後日の方角を向く。
ところが次の瞬間、目だけがギロリと動き俺を捉えた。
ダメージなど無い。そう言わんばかりに素早く腕を振り抜く。
ガードが間に合わず道着が切り裂かれる。それだけに留まらず腹部に鋭い痛みが走った
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