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「ちょっと待ってて」
デスクにスマホを置き、デスクトップパソコンを素早く立ち上げる。
パスワード付きのフォルダを開き、引き継いだ仕事の内容に目を通した。
「あったあった。人材派遣って聞いてたけど、合ってる?」
『あぁ、間違いない』
「じゃあ、私の部下を……ん?」
画面下に記載されていた詳細情報。その一部が夏目の目に止まる。
「へー、これはこれは……」
興味深そうに眺め、人知れず夏目は笑みを浮かべた。
「依頼は正式に承るわ。日が近くなったらまた連絡を頂戴。それでどう?」
『構わない。ご協力感謝する』
短い言葉で礼を残し通話は切れてしまった。
無愛想な通話相手に無言で画面を眺めるも、すぐに気持ちは切り替わった。
「ま、日数はまだ余裕あるし動くのは後でいいでしょ。とりあえず今はコンビニ優先!」
デスクライトを切り、部屋を後にする足取りは軽い。一時は邪魔が入ったがその分解放感は増していた。
11回建てのビルから明かりが消える。表向きは誰もいない朝を待つだけのビルとなった。
宿り身の拠点であるビルは今日も静かに世界を見守り続ける。
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