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「そう言う矢浪さんは?」
「俺は……」
口にする寸前で俺と折坂は同時に足を止めた。
3つ並んだ白塗りの大きめのプレハブ小屋もとい部室。
その陰。恐らく学校の敷地内で最も人目の付かない場所に男子生徒が3人背を向けて立っていた。
立ちションでもしているのかと怪訝に思ったがそうでもないらしい。
「だからさぁ、金出せよ金。何回も言ってんじゃん」
取り囲み見下ろした先に縮こまった男子生徒が1人。物騒な物言いといいどう見てもカツアゲ真っ最中だった。
部室の近くで面倒くさい真似するなよな。そう思った時だった。
「あーあ、いっけないなー。あれはいけませんよ」
悪事を糾弾している、のだろう。
その正義感を素直に誉めてあげられないのは、それ以上の悪意を折坂から感じたからだった。
「折坂、また羽目外すと謹慎食うぞ」
これからしでかすことを予測し先に釘を刺すも、折坂はやたら無邪気に笑顔を見せ、
「やだなー、イジメを成敗するだけですよ?悪いことはダメだぞって言ってやるだけっす」
口で言うだけならなぜ指の関節を鳴らす。人を殴れる免罪符を見つけられてラッキーって顔に出てるんだよ。
しかし、理由はどうあれ蛮行を止めなくてはならないのは俺も同意だ。
笑顔のダッシュで駆け寄る折坂に遅れを取らないよう、急いで後を追いかける。
「キミ達ー。俺らのナワバリで何してんの?」
挨拶代わりに挑発混じりの声を掛ける折坂。
「んだよ。邪魔すんなよな」
3人は億劫そうに振り返る。腕力で物を言わせるタイプではなく、弱い者イジメを好みそうな奴らだった。
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