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霊科研が拠点としていた民家は未明に全焼した。火災の原因について消防は明言を避けた。焼け跡から発見された死体は二つ。どちらも成人男性のもので身元は調査中と発表された。
蘇芳は生き延びていた。
西村が二階から降りてきて警告を発した時、入れ替わりに彼女は自室にもどり、素早く着替えていた。
蘇芳の手元には霊子感応性を下げる薬剤があった。山南や西村には効かない。彼女のような天性の能力者のみを守ることができるものであった。それを静脈に注射し、リビングにもどったとき、山南と西村はすでに呼吸していなかった。
データを消去するまでもなく、霊科研の機材はすでに内部から破壊され、その一部は発火、炎上していた。
この時点で、拠点を取り囲んでいた天使たちはその場を立ち去ろうとしていた。
霊子感応性をゼロ近くまで引き下げていた蘇芳を、天使たちは認識することができなかったのだ。
自分が生きている痕跡を残すべきではないと蘇芳は判断した。
拠点を炎上するにまかせ、車も銃もその場に放置し、彼女は夜の住宅街へと歩き去った。
向かった先は、1番のトランスミッターのありか。
葛城じゅりあの住まいだった。
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