第一章

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デッキから船内に入った滝本はラウンジに向かう。 夕食にはまだ早い時間だからか、空席が多い。 入口近くのテーブルに、とても色白で線が細い、はかない美しさを感じさせる女性が座っている。 年は二十代前半くらいだろうか。 何だか不安そうでドキドキしているように見える。何か心配事があるのだろうか。 自分に力になれることがあれば、力になりたい。 そう思った滝本は、女性に声をかける。 「前に座っても良いですか」 「どうぞ」 不安そうな表情は、少しやわらいでいるように見える。 滝本は女性の向かいの席に腰かけ、りりしい顔立ちに笑顔を浮かべて、 「僕は滝本涼吾(たきもとりょうご)です。あなたのお名前は?」 「七瀬綾(ななせあや)です」 「どうしてこのクルーズに参加したのですか?」 「なるべく、人のいないところに行きたくて……」 何か理由があるのだろうか。 滝本がそう思っているとラウンジに、がらの悪そうな男とおとなしそうな男が入ってきた。 その瞬間、七瀬の表情はさらに不安そうになり、かなりドキドキしているように見えた。
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