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デッキから船内に入った滝本はラウンジに向かう。
夕食にはまだ早い時間だからか、空席が多い。
入口近くのテーブルに、とても色白で線が細い、はかない美しさを感じさせる女性が座っている。
年は二十代前半くらいだろうか。
何だか不安そうでドキドキしているように見える。何か心配事があるのだろうか。
自分に力になれることがあれば、力になりたい。
そう思った滝本は、女性に声をかける。
「前に座っても良いですか」
「どうぞ」
不安そうな表情は、少しやわらいでいるように見える。
滝本は女性の向かいの席に腰かけ、りりしい顔立ちに笑顔を浮かべて、
「僕は滝本涼吾です。あなたのお名前は?」
「七瀬綾です」
「どうしてこのクルーズに参加したのですか?」
「なるべく、人のいないところに行きたくて……」
何か理由があるのだろうか。
滝本がそう思っているとラウンジに、がらの悪そうな男とおとなしそうな男が入ってきた。
その瞬間、七瀬の表情はさらに不安そうになり、かなりドキドキしているように見えた。
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