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第二章
翌日、クルーズ船はすでに公海上を航行している。
滝本がラウンジに向かうと、七瀬がやはり入口近くのテーブルに座っている。
奥の方のテーブルでは、昨日とは別の男ふたりが何やらコインをステンレスのグラスに入れて遊んでいるらしい。
滝本は近づかない方が良いと思ったが、七瀬は興味を覚えているようだ。
滝本と七瀬は奥の方のテーブルに近づく。
「僕はもうやめるよ」
そう言って、男がひとり去っていった。
テーブルには、コインが一枚、ステンレスのグラス、メモ帳とボールペンが置いてある。
残った方の男は須藤と名乗り、七瀬に話し始める。
「暇つぶしさ。金は賭けない。ルールは単純だ。俺が親で、あなたに見えないようにコインを表か裏かを確認してステンレスのグラスに入れる。当然、俺にはコインが表か裏かは分かっているが、あなたには分からない。あなたはコインが表か裏かを予想して、俺に見えないように紙に書いて、裏返す。グラスを開けるのと、紙を表にするのは同時にする。どうだい?」
滝本は、お金を賭けないし、ただのお互いの読み合いだと理解した。
大丈夫、七瀬さんに危険はない。
そう判断する。
「私、挑戦してみる」
七瀬の表情は、打って変わって楽しみでドキドキしているように滝本には見えた。
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