不幸なのは私だけ……?

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不幸なのは私だけ……?

慶應義塾大学 美咲が講義を午前の講義を終え足早に大学を 出ようとすると、美咲の友人たちがそばに寄り その中の1人である夏美が美咲に声をかけた。 「ねぇ美咲。今から皆でカラオケ行くんだけど 美咲も来ない?」 「ごめんね。今日、2時には家に居なきゃいけないから、また今度誘ってね。」 夏美がそう言うと、美咲は申し訳なさそうに 言った。 「…そっか!OK、じゃあまた今度。」 美咲は話が終わると、少し早歩きで大学から 最寄りの駅へと向かった。 夏美は美咲の後ろ姿を見ながら、少し不安そうな声でただ一言、「大丈夫かな?」と呟いた。 美咲が自宅へ着くと、玄関に彼氏の透が 待っていた。 「おかえり、美咲。」 不敵な笑みで美咲を迎えた。 「……透くんただいま。」 美咲は少し緊張した様子で透に返した。 「美咲、2分遅れてるよ。」 「ごめんね。一生懸命帰って来たんだけど、 ちょっと遅れちゃった。」 「あーそう。なら良かった。」 美咲が慌てて言うと、透は少し安心した そんな様子で自分の部屋に戻った。 透に捨てられたくない。美咲はそれだけを 思って生活をしていた。ある種、洗脳を 受けているような生活であった。 美咲が部屋でテレビを観てると、 美咲の部屋に透が入り、ベットの横に座った。 「ねぇ美咲。明日せっかくの休みだし、 出掛けようよ。」 「…あ、確かに久々に出かけるのもアリかも…」 美咲はそう言いながらふと思い出したかのように 携帯のカレンダーを見た。 「透くんごめん。友達と明日遊んで来ようと 思うんだけど。」 美咲がそう言うと、透は恐ろしい形相で 美咲に詰め寄った。 「ねぇ女友達だけ?男はいない?何時に帰って来るの?誰が来るか教えてよ。」 美咲は透からの質問責めにあった。 「大丈夫。いつものメンバーだから。」 美咲は少し驚いた様子で言った。 次の日 美咲が渋谷駅に着くと、夏美が先にハチ公前で 待っていた。 「やっほー美咲。」 「夏美待った?ごめんね。急いだんだけど…」 「なーに。たかが2分じゃん。気にしないよ。」 美咲が謝ると夏美は笑顔で慰めた。 2人は近くのカフェへ行くと、夏美が真剣 そうな顔で美咲を見つめた。 「今日はちょっと美咲に話したいことが あって呼んだんだ。最近、美咲元気ないから 彼氏と上手くいってないんじゃないかって 思って。」 「…!!そんなことないよ!!透くんは優しいし、 毎日楽しいよ。」 夏美がそう言うと、美咲は慌てるように 否定した。すると夏美は美咲の手を引っ張り 長袖のパーカーの袖をめくった。 「じゃあ美咲。これはなに?」 美咲の服の袖をめくると、無数の青アザが あった。それは自然的に出来るものではなく、 誰かに叩かれたりしないと出来ないほどのアザ であった。夏美がそう言うと、 美咲の目から急に涙がこぼれた。 「ごめん……本当は私、透くんが怖いよ。誰と遊ぼうにも場所とか帰る時間とか……全てを把握して、 それを1分でも超えると、私を睨んだり 罵ったり殴られたり……でもわたしは透くんが居ないとなんにも出来ないんだって思ってきて、 別れるのが怖くて……」 美咲がそう泣きながら話すと、夏美は 美咲の傍によって肩をさすった。 「大丈夫。美咲はそんなことない!! 私は何時でも美咲を守るから。安心して。」 夏美はそう言いながら無力な自分を恨んだ。 そこから数時間夏美と遊び 辺りは真っ暗になった。 夏美は美咲の家の近くまでついて行った。 「夏美、そんなに送ってくれなくてもいいのに。」 美咲は申し訳なさそうに言った。 「ううん。ちょっと美咲が心配だし、 何よりこの時間にこんな可愛いレディを1人で 歩かせる訳にはいかないからね。」 夏美は冗談交じりに話した。 2人で歩いていると、1つの影を見つけた途端 急に美咲の歩く速度が遅くなり、夏美の手を いきなり掴み始めた。 その異常な行動に夏美は前の影に美咲が物凄く恐怖を感じてることをすぐに察知した。 前に現れたのは透だった。 「ねぇ美咲。遅いじゃん……ってあれ? お友達の人ですか?」 夏美は透の異様なまでの空気に鳥肌が立った。 「はい。透さん?かな。美咲の彼氏さんの。 美咲の帰りはすいません。私がちょっと寄り道 したもんだから。美咲は何も悪くないですから。」 「ごめんね。透くん連絡しなくて。」 美咲はいてもたってもいられず、自ら 透に謝罪をした。 「じゃあそういうことなんで、美咲は俺と帰るんでお引き取り下さい。」 透は煙たがるように夏美に言葉を発した。 半ば強引に美咲を引っ張ると、少し引きずるように 美咲を連れて立ち去ろうとした。 「あの!!」 夏美は透に遠目から声を掛けた。 「美咲じゃあね。」 夏美は美咲に手を振り美咲の姿が見えなくなる 最後まで見送った。 美咲を見送った後夏美は歯を食いしばりながら 自分の拳を強く握りしめた。 その頃強引に透に引っ張られた美咲は家に着くや否やベットに叩きつけられ透から平手を受けた。 「なぁ何一つ連絡しなかった!!1分でも 遅れるなら連絡しろって何回言えばいい!?」 透はそう言いながらグーでみさきの頬や上半身を 何度も殴り、蹴り続けた。 その間美咲は何度も「ごめんなさい」と言い続けた。謝ればいつかは終わる。ただそう思って。 「俺はこんなにも美咲を愛してるのに…… なんでそれが美咲は分かってくれないんだ!!」 いつもより私念が混ざっているため、そう簡単に 終わるものではなかった。 「お前は俺が居なきゃなんにも出来ないくせに!!」 美咲は泣きながら何度も何分も謝り続けた。 次の日、美咲はプレゼン準備の為に家を早くから 出た。昨日の殴られて出来たアザを隠すために いつものようにパーカーとズボンで出かけた。 美咲が歩いていると、後ろから夏美が声を かけてきた。 「おはよう!!美咲。……ねぇ大丈夫?」 夏美は美咲の表情に不安を抱いた。 「え、何が?」 美咲は何事もなかったかのように明るく振舞った。 「ちょっと顔が……!」 夏美がそう言いかけると、美咲は 慌てて話題を変えようとした。 「あ!!もうプレゼンの準備するからじゃあね。」 美咲は夏美から逃げるように歩いた。 美咲は昨日の夜に透とある約束を強制的に 言われた。 # もうあの女とは関わるな。__・__# 透には美咲を守ろうとする夏美の存在は 邪魔で仕方なかった。 自分のものにしたいのに、全てあいつが邪魔を する!!… 透は毎日のように夏美に憤りを感じていた。 ……あいつさえ消えれば、美咲は俺だけの ものになる。 全ては美咲には透しか居ないと思わせるためのテクニックだった。 もう逃げ場はない……美咲はそう悟った。 そこからLINEなどのトークは全て透がチェックすることになった。そして、大学への行き来は透が運転する車で行くことになった。これで夏美との会話は完全に途絶えてしまった。 翌日から透が美咲を大学まで送ることになった。 2人は車で大学まで向かい、そこからなるべく人と交流しないことを約束に車を出ていく。美咲は透に服従するしか方法はなかった。 「……じゃあ透くん行ってくるね。」 「行ってらっしゃい。また講義の後迎えに行くから。…あと、これ」透はジャケットのポケットからお守りを美咲に渡した。 「悪よけのお守り。美咲に害虫がつかないように昨日買っといたんだ。……じゃあ!!行ってらっしゃい!!」美咲を笑顔で見送ると、透は車を発進させた。 美咲が教室へ向かう途中で夏美とばったりすれ違った。 「あ、美咲…」 美咲は瞬時に目を瞑り、何事も無かったかの様に 夏美の横を通り過ぎようとした。しかし、横切ろうとした美咲の手を掴み、静止させた。 「美咲。あんたが彼氏になんて言われたかは、分からないけど、私はいつでも味方だから。」 夏美はそれだけ言うと、美咲の手を離し、立ち去ろうとした。 「……待って!!……」 夏美は足を止め美咲の方を振り返った。 「……私を助けて。」 美咲は出るはずの講義を欠席し、夏美に別れた後にあったことを全て話した。夏美はそれを何も言わず、ただ頷き、時折美咲の頭を撫でながら聞いていた。 美咲は全てを話すと、安心して夏美の胸の中で泣いた。 「私、もう辛い。解放されたいよ……!!」 「辛かったね。大丈夫……もう大丈夫だから。」 夏美はある計画を考えた。 「じゃあ当分の間私の家で暮らしなよ。」 夏美がそう言うと、美咲は慌てて断ろうとした。 「夏美、それは申し訳ないよ。それくらい自分でホテル探すから。」 「ダメ!!彼氏はあそこまで執念深い人なら1人の時に襲ってきてもおかしくないからさ。私の家だったらちゃんと守れるし。」 夏美はそう言って美咲が家に来ることを歓迎した。 「じゃあそうと決まればすぐに移動!!急ぐよ!!」 2人は大学を抜け出し、急いで夏美の家まで向かった。 ……その頃 「あれ?美咲……大学の講義まだ終わってないのに大学から出ようとしてる?……また、あいつか。」 透は暗い部屋の中で1台のパソコンを見ながら呟いた。 夏美の自宅 「じゃーん笑ここが私のお家です。」 案内された先は、都内のマンションの一室だった。 「夏美ってこんな広い場所住んでるんだ。」 美咲は驚いて、薄っぺらい感想しか出てこなかった。 「ここならオートロックだし、いきなり人が入ることはないよ。」 夏美が自慢げに部屋を語っていると、美咲はいきなり頭を下げた。 「ほんとにありがとう!!美咲にはなんて感謝したらいいか……!!」 「なぁに、私は美咲のお陰で今があるんだから。ほんとに感謝してるのは私だよ。」 夏美は入学してから半年間友人を作ることが出来なかった。その反面、美咲は友人に恵まれ、沢山の人と交流していた。そんな美咲を妬んでいた時期もあった。 そんなある日、夏美が大学の周りをウロウロしていると、美咲が夏美に声を掛けた。 「あの、何してるんですか?」 不思議そうに自分を見つめる美咲に少し苛立った。 「なんですか?あなたには関係ないでしょ。 あなたは沢山友人居るんだから、私に構わないで そっち行けばいいじゃないですか。」 なつみがそう言うと、美咲は少し笑った。 「何がおかしいんですか?」 「いや、私にそんな感じで来る人初めてだったんで、ちょっと面白くて。あと、なんか私と似てるなって思ったんです。」 そこから2人は打ち解け、旅行など行く仲まで発展した。 「だから私は、なんか美咲に恩返し出来たらなって思ってたから。お礼なんて……」 その夜 「美咲、今から夜ご飯作るね。」 夏美はそう言いながら冷蔵庫を開けると、中には何一つ入っていなかった。 「うわぁ〜、一人暮らしでなんも買ってないや……。美咲、今から近くのスーパーで食材買ってくるから、お留守番お願いね。」 「OK。」 夏美はすぐに着替え、家を飛び出した。 数分後 ……ピンポーン 夏美の家のインターホンが鳴った。 美咲は恐る恐るインターホンのカメラを見ると、 宅配便の服で帽子を深々と被った配達員だった。 「お届けものです。」 美咲はオートロックを解除して配達員を玄関に案内した。 美咲が玄関を開けると、居るはずの配達員はおらず、透が玄関に立っていた。 「美咲……なんでここにいるのかな?」 透はそう言いながら部屋に強引に入り込み、美咲の髪の毛を引っ張りながらリビングへ引きずり込んだ。 15分後 夏美が駐輪場に自転車を止めていると、自分の部屋の方から女性が泣き叫んでいる声が聞こえた。 夏美は自転車を投げ出し、自分の部屋に走った。 夏美が部屋に入ると、そこには何度も殴られ血だらけの美咲と、居るはずのない透の姿があった。 「なんで居るんですか!?」 夏美が透に向かって叫ぶと、透は美咲をゴミのように投げ出し、夏美に向かって怒鳴った。 「お前のせいだよ!!お前が余計な事するから、美咲に教育してんだよ!!」透はそう言って倒れている美咲の腹を目掛けて蹴った。美咲は叫ぶ体力もなくなり、サンドバッグのような状態だった。 「なんで……スマホは美咲が持ってないから場所は分からないはずなのに……」 夏美がそう言うと透はニヤけ、美咲のバッグからお守りを取り出した。「そうなることも予想して、このお守りの中にGPS入れといて良かったよ〜。まぁこんなに不用心だとは思わなかったけどさ。」 「……悪魔。」夏美がそう呟くと、透は笑いながら夏美に近づいた。 「お前は、美咲にとって害虫だ。害虫は駆除しなきゃなぁー!!」透はそう言い終わると、夏美の頬を殴った。夏美は殴られた拍子で隣のキッチン付近まで飛ばされた。1発……2発と夏美の頬を何度も殴った。 ほんの少し夏美がキッチンの方へ目を向けると包丁が目に見えた。 〜私がこいつをやらなきゃ、2人まとめて殺される!! そう悟った夏美は透を蹴った後、すぐさま立ち上がり包丁を片手で持った。 「来ないで!!近寄ったら私はあんたを刺す!!」 夏美がそう叫ぶと、透は笑いながら夏美の方へゆっくり近づいた。 「……どうせお前は俺を刺せない。手、震えてるもんな。怖いんだろ、人を刺すのが。」 夏美は近付いてくる透の手を切った。 透はあまりの痛さに叫んだ。 「…痛ってぇ!!このクソ女マジで切りやがった!! マジで殺す……ふざけんなぁ!!」 殺気を立てて向かってくる透にもう1回上から振りかぶって切りつけた。 大量に出血しうずくまった隙に夏美は警察に連絡した。 3分後 警官が現れ、透の身柄は警察に連行された。 血だらけの美咲は救急隊員が急いで運び一命を取り留めた。そして警察が来た安心感から、夏美は一気に意識が朦朧とし、その場で倒れた。 半年後 今回夏美は正当防衛が通り、不起訴で捕まることはなかった。そして透は有罪が言い渡され、10年の懲役となった。美咲はアザなどは消え、パーカーではなく、ワンピースなども着れるようになった。 あれから2人は同棲することになった。夏美からすればその方が何倍も安全だかららしい。 そして、万が一の為に別の家に引っ越したのだった。 「美咲!!早くしないと、大学遅れるよ!!」 「もう待ってよ!!あと少しで終わるから!!」 2人が身支度をしていると、美咲の携帯に非通知で電話が来た。2人が恐る恐る電話に出ると、刑務所に居るはずである、聞き覚えのある声が家中を響かせた。 #また、逢いに行くね。美咲__・__# それだけ言われると電話は切れた。 夏美が慌ててテレビをつけると、速報でニュースが流れた。 ~只今入ったニュースです。今日の早朝に暴行、殺人未遂の容疑で捕まった#松崎 透容疑者__・__#が 脱走しました。警察は犯人の行方を探ってる模様です。 「…嘘でしょ……?」 恋の果実 [完]
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