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スーパー
「あちゃ~。やっちゃった――」
ゴールデンウィークが開け、この日もいつもと変わらない一日を過ごしていた敏子は、珍しく少し遠出をしたところにある激安スーパーに来ていた。
悪の秘密結社㈱ボルケーノ社を倒すべく設立された、㈱美少女戦隊に事務として勤務する敏子は、五十六歳のおばさんである。㈱美少女戦隊の社長、淵東楽人の母でもある。
ちなみに、㈱美処女戦隊は、宿敵㈱ボルケーノ社と戦うために、この四月に五人の美少女戦士を新規採用した、家族経営のベンチャー企業である。
日没にはまだ日は高く、ドライブ日和な天気に敏子は心弾ませていたのだが……。
少しばかりドジな面がある彼女は、陳列棚の縁に置かれた、ピラミッド状に高く積み上げられた箱入りのお菓子に、自身の鞄をぶつけ崩してしまった。お菓子の箱は床に散乱し激しく広がった。敏子はすぐに拾い始める。
スーパーには車で来たのだが、遠出をするときは息子たちに運転をお願いする。この日は次男の勇斗が付き添いだった。
母がピンチだというのに、勇斗の姿はない。どこにいるのかを、少し時間を遡って話そう──。
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