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「でも彼はすっかり変わったんだよ。私身長貸す時にいつも話聞いてたんだ。」
『やれやれ』といった様子のおばあさんに女性がかばうように言う。すると男性が彼女の腕をとった。
「僕を変えたのは君だよ。体も心も大きい君が好きだ。本当はもう身長なんてどうでもいい。むしろ今のままの自分で君といたい。君に会う口実が欲しくてここに来てたんだ。」
「それ、ほんと?」
男性と女性は熱い視線を絡ませ合っている。完全に二人の世界だ。
「あんた達二組のアベックが何度もレンタル身長をしていたお陰で温泉のエネルギーも少しずつ減ってたんだよ。」
「だから俺にレンタル身長を成立させるようにおっしゃったんですね。」
一紫の言葉におばあさんが頷く。
「あんた達が辛い状況でずっと一緒にいるとは思わなかったが。よっぽど愛が深かったんだな。」
そう言って私を見て微笑んでくれた。
「孫の身長コンプレックスがなくなったことで嫉妬心が消え呪いが解けこの温泉にも身長自由自在の効果はなくなった。めでたしめでたし。」
踵を返し出ていこうとするおばあさんに声をかける。
「あの!もしかしてライブ配信でこの温泉の事教えてくれたのって・・・。」
あのコメント主はおばあさんなのではないか。
「『ラブ歯医者』?はて?わしは『ねっと』の事はさっぱりわからん。」
彼女は意味ありげに笑うと背を向けて脱衣所に向かったが顔半分のみ振り返った。
「孫が迷惑かけたな。幸せになってくれ。」
そう言ったと思うとスッと姿を消したのだった。
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