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『身長自由自在温泉』はまるで最初からなかったかのように消えた。ライブ配信のアーカイブを観てもあの温泉に関してのコメントは存在しなかったしネットに載っていた住所も消えている。
「私、あの時せっかく身長が高くなってたのに、全然それを楽しんでなかったな。限られた時間を一紫と過ごすことしか考えていなかった。」
湯船に浸かりながら彼・・・いや夫に言う。あれからすぐ私達は入籍した。
「私が身長足りなくて夢破れていなかったら一紫と出会えてなかったんだよね。私は私で良かった。」
そう言うと大きな夫の体が小さな私の体をすっぽり包み込んだ。
「こうやって包み込める小さな舞白が好きだ。君でいてくれてありがとう。」
振り向くと一紫も同じことを考えていたらしく唇が重なった。
大好きな人と一緒に浸かるお湯こそ数々の効能がある秘湯なのかもしれない。
───『秘湯 身長自由自在温泉』 完───
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