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「いいお湯だぁ~。」
濁っていてとろりとしており私好み。街中とは思えない静かな環境で広い露天風呂を独り占めなんて最高。
梅雨真っ只中の今日はどんよりと曇っていて気温も低い。その為体は温かいのに顔は涼しく長い間浸かっていられる。湯と空気で気温差があるから辺りは少しけぶっていて雰囲気があって良い。
『身長自由自在温泉』という名の由来は何なんだろう。ホームページ等はなかったし脱衣所に貼ってある成分表にも特別な情報はなかった。血行が促進され体に良いというだけなのかもしれない。『自由自在』ということは身長を伸ばすだけではなく縮めることも出来る、という意味になるけれど。
───何でもいっか~。
体も心もすっかりほぐれ、のほほんとした気分になる。
と、ふいにバシャッと音がして飛び上がりそうになる。誰もいないと思い緩みきった表情で全身を伸ばしていた為慌てて顔と体を引き締める。
ザブザブという音が近づいてきたのでなんとなく岩陰に隠れる。ザバッと上がる音がしたので出ていったと思い見てみる。
───まだいる・・・えええ!?
そこにいるのはどう見ても男性だ。
───混浴!?そう言えば女湯と男湯に分かれてなかったかも!
反射的に体を手で隠す。
───早く出てって・・・!
再び様子を伺うと横顔が見えた。
───嘘!まさか・・・!
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