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入ってきたのは元々の私と同じくらいの身長のおばあさんだった。
身長を伸ばしたくて来たのだろうか。思わず目で追っていると慣れた様子で入場してきた彼女は鳶色の瞳で私をじっと見てきた。慌てて目をそらしカットソーを着ようとするが小さくて着られない。
「あんた、背ぇ伸ばしたんだね。」
「えっ。」
おばあさんは自分の荷物から浴衣と帯を取り出して渡してくれた。
「着な。やるよ。」
ミニ浴衣になったが着ることが出来た。
「身長をどうこうする気がない者はこの『±0cm』の券を買うんだ。」
そう言って券を見せてくれた。
「+何cmとかの券を買っても一緒に温泉に入ってる人と±が合わなければ何も起こらん。」
「どういうことですか?」
「あんたが30cm高くなったんなら一緒に入ってた人は-30cmの券を買ってたってことだ。それで『レンタル身長』が成立する。」
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