王国を繋ぐ者

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 僕の髪を丁寧に櫛で梳くユリウスを、ちらりと窺った。  後継者のことを、ユリウスに尋ねたら何と言うだろうか。現実に目を背けて、いままでちゃんと話し合ったこともなかった。  ユリウスが側室を迎えるはずがないことはわかっている。だから、するとしたら僕だ。  ユリウスは僕の立場を理解している。最後は必ず僕の意見を尊重してくれる。  当然はじめは反対するだろう。でも国のためだと割り切って、渋々でも了承してくれたら、すべてが丸く収まって―― 「ねえ、ユリウス」  ただの仮定として聞いてみるくらいなら、大丈夫だろうと思った。 「……もし僕が側室を迎えると言ったら、ユリウスはどうする?」  その瞬間、髪を梳いていた手の動きが止まった。 「……爺さまにそう言いくるめられたのか?」  僕よりずっと背の高いユリウスの声が、頭の上に降ってくる。その大きな影の中で、思わず萎縮し、視線を落とした。 「いや……そういうわけじゃないんだけど、えっと……」  なぜこんなに動悸がするのだろう。背後を振り返れない。 「ルイはもともと女が嫌いだろ。何で急にそんな話になるんだ」 「急に、ってわけでは……ないんだけど……」 「急じゃないならいつから考えてた? いつから女が平気になった?」 「べ、別に平気ってわけじゃ……でも、先々のことを考えたら……」 「……もしかして今日の祝賀パーティーで、妃にしてもいいなと思う女でも見つけた?」 「そんなわけないだろ!」  振り向きざまに怒鳴りつけた瞬間、ユリウスと目が合った。その瞳に浮かぶ、凍りつくような怒り。 「そういうわけでもないのに、誰を側室にするわけ?」  背筋に冷や汗が流れる。
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