ジェイド18歳(レミ13歳)

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ジェイド18歳(レミ13歳)

 幼い頃から、お前は王に命を捧げるために生まれたのだと言われて育った。  生を受けたのは、代々ウェヌス王家に忠誠を誓ってきた家系であり、祖父は先代のルイ・ル・グランの側近、父はルイ陛下のお父上の側近、そして叔父は、ユリウス殿下が王家に戻られるまで、もっとも近くでルイ陛下のお世話と護衛をしてきた者であった。  もしルイ陛下にお子が生まれれば、その方がお前の生涯仕える主君となる。幼い頃から、父や叔父にそう言い聞かせられていた。  だがルイ陛下は従兄君のユリウス殿下と同性婚をされた。ふたりのあいだに世継ぎは生まれない。だから主君となる方にお会いできるのは、もう少し先のことだと思っていた。  だがある日、王宮から急な呼び出しがかかった。ルイ陛下が、王家の血を引く遠い親類の少年を養子に取ったのだという。  初めて目にしたその王子は、ルイ陛下の幼い頃によく似た、輝くように美しい少年だった。  にこりと笑みをこぼすだけで、瑞々しい明るさが全身から溢れ出す。そこにいた皆が、一瞬で心を奪われたのがわかった。  その人の前に膝をついたのは、無意識のうちだった。それとも自分の身体に流れる血のせいだったのだろうか。  まだ幼い手を取り、くちびるを寄せる。この世でただひとり、我が主君と崇め、命を捧ぐと誓うために。 「ジェイドと申します。本日からレミ様にお仕えいたします」 「わかった、ジェイド。仲良くしような」  まるで友人になるような気さくさで、屈託なく笑う。私の手をぐいぐいと引っ張り立ち上がらせると、その手を離さぬまま王宮の奥を指さした。 「あっちの方に探検に行きたいんだ。一緒に行こうぜ、ジェイド!」  何と無邪気で可愛らしいのだろう。この方を主君にすることができて幸運だと、心から思った。  自分の運命が動きはじめたあの日。  生涯、この笑顔が失われないように、一番そばで守って差し上げよう。私の命を、人生のすべてを、この可愛い主君のために捧げよう。そう固く心に誓った。
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