運命の井戸の底【レミ】

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 * * *  レミがなぜか傷だらけになって、国内巡りの旅から戻ってきた。帰ってきてから、どうも以前とようすが違う。ときどきぼんやりと窓の外を眺め、気怠いため息を吐いたりするのだ。  何だか急に大人になってしまったような気がする。  三人で昼食をとりながら、レミが僕らに尋ねた。 「どうしてふたりは同性婚しようと思ったの? そのためにわざわざ法律を改正したんだろ?」 「ルイは俺のものだから視界に入れるのも控えろと、全世界に宣言したかった」  大袈裟な発言をするユリウスに、レミは冷ややかな目を向けた。 「ユリウスって頭がイカレてるんじゃないの? ルイも本当にこいつでよかったわけ?」 「うん。僕はけっこう幸せ」 「なら別にいいけどさぁ」  レミはパクパクとステーキ肉を頬張りながら、なぜか意味深な視線を向けた。 「……そういやルイもユリウスも、俺に王座を譲ったら王家は安泰だと思ってない?」  ぎょっとして、ふたりでレミを見返す。ユリウスは僕の肉を切り分けていたナイフを振り上げた。 「お前、まさか俺たちに何か隠してるのか?」 「ど、どういうこと? 安泰じゃないの?」  レミは僕らの顔を交互に見つめ、にやりと口の端を上げる。 「だって、もし俺が男を好きになったら、やっぱり後継ぎができないじゃん?」 「レミ、まさか男を好きになったの!?」 「本気じゃないよな! 頼むからお前は女と結婚しろよ!」  焦る僕らを見て、レミはケラケラと腹を抱えて笑う。 「まだそんな予定はないけどさぁ、将来的にはわかんないじゃん? もしふたりみたいに運命の相手が男だったら、まさか俺のときだけ反対したりしないよね?」  からかわれるようにそう聞かれ、返す言葉を失う。ユリウスは、はあーっと大きく息を吐き、頭を抱えた。 「これじゃあいつまで経っても後継者探しが終わらないじゃないか」 「いいよ、そうなったらまた第二のレミを探そう」  諦め混じりにユリウスの肩を叩く。  レミはまるで夢見るように、ブルーの瞳をふわりと空に向けた。 「あーあ、早く運命の人が俺に会いに来てくれないかなぁ」
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