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レミがなぜか傷だらけになって、国内巡りの旅から戻ってきた。帰ってきてから、どうも以前とようすが違う。ときどきぼんやりと窓の外を眺め、気怠いため息を吐いたりするのだ。
何だか急に大人になってしまったような気がする。
三人で昼食をとりながら、レミが僕らに尋ねた。
「どうしてふたりは同性婚しようと思ったの? そのためにわざわざ法律を改正したんだろ?」
「ルイは俺のものだから視界に入れるのも控えろと、全世界に宣言したかった」
大袈裟な発言をするユリウスに、レミは冷ややかな目を向けた。
「ユリウスって頭がイカレてるんじゃないの? ルイも本当にこいつでよかったわけ?」
「うん。僕はけっこう幸せ」
「なら別にいいけどさぁ」
レミはパクパクとステーキ肉を頬張りながら、なぜか意味深な視線を向けた。
「……そういやルイもユリウスも、俺に王座を譲ったら王家は安泰だと思ってない?」
ぎょっとして、ふたりでレミを見返す。ユリウスは僕の肉を切り分けていたナイフを振り上げた。
「お前、まさか俺たちに何か隠してるのか?」
「ど、どういうこと? 安泰じゃないの?」
レミは僕らの顔を交互に見つめ、にやりと口の端を上げる。
「だって、もし俺が男を好きになったら、やっぱり後継ぎができないじゃん?」
「レミ、まさか男を好きになったの!?」
「本気じゃないよな! 頼むからお前は女と結婚しろよ!」
焦る僕らを見て、レミはケラケラと腹を抱えて笑う。
「まだそんな予定はないけどさぁ、将来的にはわかんないじゃん? もしふたりみたいに運命の相手が男だったら、まさか俺のときだけ反対したりしないよね?」
からかわれるようにそう聞かれ、返す言葉を失う。ユリウスは、はあーっと大きく息を吐き、頭を抱えた。
「これじゃあいつまで経っても後継者探しが終わらないじゃないか」
「いいよ、そうなったらまた第二のレミを探そう」
諦め混じりにユリウスの肩を叩く。
レミはまるで夢見るように、ブルーの瞳をふわりと空に向けた。
「あーあ、早く運命の人が俺に会いに来てくれないかなぁ」
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