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呼ばれる名前、呼ばれない名前
俺が王宮に来て半年。ウェヌス王家の正式な王位継承者としてのお披露目式が大々的に開催されることになった。
ウェヌス王宮の王宮前広場に、王都の住民が続々と詰めかける。俺はやたらと豪勢な金ピカの一張羅を着せられ、周りに言われるがままに儀式をこなしていった。
集まった人々の目は、俺よりもルイに釘付けだった。ルイはウェヌス国王に代々受け継がれるという、引きずるように長い純白のローブを羽織っていた。
目が眩むほどの美貌とはまさにこのことだと思う。
派手に着飾った貴婦人も、満開に咲く花々も、どんな高価な宝石も、ルイの前では霞んで見えてしまうような。
(――俺もいつか、あんなふうになれるのかな)
ぼんやりそんなことを考えた。
俺の姿を見ると皆、むかしのルイに瓜二つだと口を揃える。
でも俺にはよくわからない。そもそも若い頃のルイを見たことがないし、いまのルイはあまりに綺麗すぎて自分と似ているように思えない。
綺麗になりたいなんて、いままでぜんぜん思わなかった。そもそも俺は男だし、綺麗って言われるより、男らしいと思われる方がずっといい。
ずっとそう思っていたのに。
鏡を見るたびに思う。
むかしよりは少し、大人っぽくなっただろうか。ルイみたいに、髪を伸ばしてみたらどうだろう。でも俺は巻毛だから、ちょっと派手すぎるかもしれない。
繰り返し、自分の未来の姿を想像する。
――いつか大人になったら。
――ルイみたいに綺麗になったら。
――運命の女だと、認めてもらえたら。
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