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ジェイド、と世話役兼護衛の名を、代わりに呼んだ。
五つ年上で、寡黙で、忠誠心が強い。代々ウェヌス王家に仕えてきた騎士身分の男だ。
「……俺って本当にルイに似てる?」
「ええ、そっくりですよ。本当の弟君のようです」
「じゃあ俺もいつかルイみたいになれる?」
「もちろんです。ルイ陛下のようなご立派な王になれますよ」
違うんだ。そうじゃないんだ。
俺はただあの人に、運命の相手だと認めてほしかっただけなんだ。
「……ねえ、ジェイド。叶わない恋をしたことがある?」
唐突に尋ねると、ジェイドは少し言い淀んだ。
「……ありますよ。恋は必ずしも叶うとは限りません」
「じゃあ、お前も辛かっただろうな」
すっかり馴染んだその温かさに寄りかかって甘える。
「ジェイド。俺が寂しくなったときには、必ず俺のそばにいて」
「寂しくても寂しくなくても、いつだっておそばにおりますよ」
そのとき王宮前広場に花火が上がり、大きな歓声が上がった。
王宮を包む、明るい祝福の光。その光の中にかき消えた黒い影。
耳の奥に、あの声がする。
夜の砂漠に吹く、しなやかな風のような声が。
――――運命の女だったら、きっとまた出会えるだろ?
『ルイ・ル・グランを繋げて 本編 完』
続けてレミがメインの番外編はじまります*\(^o^)/*
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